それは、同じ店の女の子と店から出て駅の方に歩いているときだった。「マユっ!」と、彼が現れたのは。


「借りたのか…」


どうしてコウセイがここにいるのか分からない。無表情で、何も考えたくない私の腕をコウセイが掴んでいた。


「いくら借りた?!」


どうしてコウセイが、お金を借りたことを知ってるんだろう。誰にも言ってない。ユタカにも。


「なんでミドウんとこから借りてんだよ!?」


どうして借りた人の名前を知ってるんだろう…。


「俺が返すから、いくら借りた?! 言え!」

「コウセイさん…」

「闇金なんかに手ェ出すなよ!!」



無知な私は、何も知らなかった。

私が借りた金融会社が、コウセイが関わっている組織とあまり仲が良くない事を。

オナクラの店長が、コウセイに私の事をずっと些細な変化でも報告していた事も。

金融会社のミドウという人が、私を手に入れたがっていた理由も…。


「…もうホストクラブに行きたくなかったの…。これ以上ユタカに依存したくなかった…」

「だからって…」

「借りれば…お金を払い続ける人生で…何も考えずに済むかなって…」

「お前…」

「ごめんなさい…ごめん……」

「……いくらだ? あの日、使った金額か?200万あれば足りるか…?」

「もう会いにこないで………」

「マユ」

「ごめんね……」





その光景を見ていたソープの女の子が、後々「あの人、ナナワタリ組のケイシさんだよね?」と、私の知らない事を教えてくれた。


ミドウ組とナナワタリ組は仲が悪いと。
元々、私はナナワタリ組の風俗にいたらしい。

もしナナワタリ組が私をお金を払って連れ戻そうとしても、私がナナワタリ組にとって大事な女の子だと分かったら、あんた生きて帰れないよ、と。



「目が覚めたらドラム缶の中とか、あったりするから」と。