正直、私は彼とはこういう仲になりたくなかった。どうしてだろう。
コウセイには、私を〝女〟として見て欲しくなかった…。
やめて、と胸を押せば簡単に離れて目と目が合う。


「コウセイさん…」

「…ん」

「…次、すれば1万円貰うから」


できるだけ低くそう言った。コウセイは「そうか」って言うだけだった。


「……ねぇ…」

「なんだよ」

「……私のこと、すき…とか言ったりするの…?」


まだ、目は合わさったまま。


コウセイは静かに「…言わねぇよ」と、私から離れていく。

言わない?
好きじゃないの?
でも、コウセイの言動や行動は、私に好意を持っているように見えるのに…。


「俺が好きだって言ったら、お前は困るだろ?」


コウセイのその言葉に私は返事が出来なかった。私は好きなのはユタカであってコウセイではないから。

ユタカが私を好きだと言えば、きっと私はコウセイを拒絶する。拒絶してしまえば、こうして話すことも無いのだから。


「私は優しい人が好き…、コウセイさんはそういうのじゃないでしょ…」

「優しくないってか?」

「ユタカがタイプだもん…」

「金をつかわすユタカが優しくて、店辞めろとか、お前の事を心配する俺は優しくねぇのな」

「……コウセイさん…」

「…じゃあな」




店の方に向かうコウセイの後ろ姿を見た。


私はその日から数日間ほど、ホストクラブに行くことが出来なかった。


私の事を好きらしい…その〝好き〟という気持ちを初めて向けられた私は、どう答えていいか分からなかった。


だから、行かない理由はコウセイに会わないようにするため。

その期間に、私は19歳になった。

お金が溜まった。

35万はあったと思う。

けれどもそれは、久しぶりにホストクラブにきて、一瞬のうちになくなった。



ユタカは、私がお金使うことを当たり前になっていた。



「今度、クリスマスパーティやるから、良かったらマコも来てね」



そういったユタカに私は、頷いた。


いつから私は、ユタカの温もりを心地よくなくなったんだろうか……。


それなのに私はユタカを手放せない…。


お金でしか、買えない関係は、きっといつか終止符が来るのだろう…。その時私は、どうすればいいのだろうか。



そう思って気づく。


私はユタカが好きなのではなく、

私を見てくれる、存在していいと言われているような気がするこの居場所が好きなんだと…。