十八と二十はどっちが大人の始まり?
そんなの国の決また勝手なラインだ。二十八になっても私は大人ではない。
答えは成長していく限り私たちは大人の振りをする子供に過ぎない。
夜とお昼の境目はどこ?
昨日まで十九時だった。今は、省吾の隣で夜は来ない。
花言葉なんてなんの意味があるの?
送った人の自己満足なのかもしれないね。それでも私は、省吾には意味のある花を贈りたいなって伝えた。
「花を食べてしまいたい衝動が、僕の恋に落ちる合図だったとしたら、僕の口の中は花びらで溢れているよ」
 昔みたいに省吾が自分を『僕』というと、私が作った花束の花びらを歯で噛んだ。
 その動作が、何かの儀式のように厳かで、なぜか艶めかしくて、ずっと見つめていた。
「でもキスはしないんでしょ?」
「……できない。なんでだろうね。誘拐して閉じ込めて自分のモノにしたいのに。花を食べたい衝動があるのに」
 好きなのに。
 それなのに、隣にいる私とキスをしたいわけではないらしい。
 ただ私が幸せじゃないから、助けに来てくれた。そんな不屈の愛の下、私は胸は痛むのに満たされていた。
「もし」
 馬鹿な言葉を吐いても、それが省吾を傷つける言葉でも、どうしても言いたかった。
「もし彼がこの場所を見つけたら」
「うん」
「もう一度彼を信じてみたいんだ」
 どこにいるのかも誰と一緒なのかも言わなかった私を、もし見つけてくれたなら。
そんな馬鹿な夢を見た。
結婚式一週間前、私は救われたのか馬鹿な決断だったのか。
それは夜が明けて彼が私を見つけ出してから、私の心が決めることだった。
「もし」
 今度は省吾が口を開いた。
「うん」
「もし、ここを探せ出せない奴だったら」
「うん」
「俺と結婚してよ」
 矛盾してる。触れたいわけではないのに、結婚したいって言う。
「うん。キスしてくれたらね」
 どちらも考えられない。でもどちらかを選べば私の物語は終わるのかもしれない。
 省吾に贈った薔薇の花束から、静かに花びらが散っていく。
 薔薇の花びらが落ちていく中、私は答えのない夜が明けるのを省吾の隣で待ったのだった。
                               FIn