もうこれで御終いにしましょうね?キミは泣きながらそう言うと、冷たく温かいナイフを、僕の胸に咲かせてそして抜き去った。散っていく花を、キミは笑って泣いて、白いウエディングドレスを真っ赤にして受け止めてくれるけど。
走馬灯のように色鮮やかに蘇るのは、キミの涙だ。
そうだ。キミはいつも傷ついて泣いていた。キミをいつも傷けて、それでも僕は悲恋の中に身を預けて余韻に浸っていた。包んであげられなかった。一度でもキミの気持ちを受け止めなかったのに。
それなのに何故、彼女が気持ちを持ち続けてくれると思ったのだろうか。
思い出してくれたのは、僕の命を惜しく思ってくれたから何だと思うと、愛しかった。
違う誰かを好きになっても、キミがこうして僕の為に泣いてくれたのならば、僕が繰り返して逃げて隠れてきた意味があるのかもしれない。
「見つけた。そしてさようなら」
 運命を断ち切るかのように、キミは僕をクローゼットの中へ蹴飛ばした。温かい運命に浸かりながら、漸く僕もこの恋の終わりを見つけた。




「パパー。パパー」
 シロツメクサが一面に咲き乱れる花畑で、キミは僕の名前は呼ばない。代わりに僕との続柄を表した総称で呼ぶ。キミがそう望んだから、僕もそれを受け止める。
 これではもうきっと、悲恋なんて起こらないだろう。ただ、良い父を演じられて、 生涯を終える瞬間、僕が死ぬ瞬間、キミは僕を思い出して惜しく思ってくれるなら。
新たな輪廻が始まってくれないかな。
「パパー。シロツメクサの花冠作ってよ」
 時代を越えても、間柄が違えど、キミに花びらを突き刺されても。
キミが愛しく思う。