「…………。さ、行きましょう」
とはいえ、僕もそれに対してどうコメントしていいか分からず、車内に少々気まずい空気が流れる中、僕は車をスタートさせた。
絢乃さんと義母は会社へ着くまでに、二人で相談して決めたという「自分なりの会長としてのあり方」について、僕に語って下さった。
まだ現役の高校生だった絢乃さんは基本的に学業優先で、出社するのは学校が終わってから。出退社時には僕が車で送迎する。そして、彼女が不在の時には義母が会長の業務を代行することでその穴を埋める。
ただ、義母はあくまでも会長の〝代行〟でしかないので、会社やグループの経営に関する決定権は持たず、決裁などの権限はすべて絢乃さんが持つのだと。これで、親子間での方針の食い違いや分裂・派閥争いなどが起こることを避けられるのではないか、と。
「――なるほど。それなら、親子で権力争いや派閥争いが起きる心配はなさそうですね。絢乃会長おひとりに、すべての権限が集中しているわけですから」
僕がそう納得すると、それは決してワンマン経営ということではなく、社長や専務などと会議で話し合い決めていくつもりなのだと絢乃さんはおっしゃった。
そういえば義父も、そういう経営方針をとっておられたなぁと僕は思った。やっぱり絢乃さんは彼の後継者にふさわしい。
平和主義者である僕は、社内で権力争いなんて起こしてほしくなかったし、代替わりでいきなり経営方針を変えられたら他の社員たちだって戸惑ってしまう。
もしかしたら彼女は、僕が安心してこの会社で働き続けられるようにと考えて下さったのではないだろうか……。
そんな彼女に、僕は心からのエールを送りたくなった。
「――絢乃さん」
「うん?」
「あなたはこれから、きっと険しい道を歩んでいくことになると思います。でも、あなたは決してひとりじゃないです。僕も、加奈子さんも、そして……亡くなったお父さまもお側にいますから。あなたのことは、絶対にお守りしますから」
そんな言葉が、口からすらすらと出てきた。それは彼女へのエールでもあり、そして僕自身の決意表明でもあったと思う。
秘書としても、彼女に惚れた一人の男としても、彼女の一番の支えになっていこうと。
すると、義母も僕に続いて彼女を励ました。「私たちが全力でサポートするから、いつでも頼ってほしい」と。
「……うん。ママ、桐島さん、ありがとう!」
僕と母親からの励ましに勇気づけられたらしい絢乃さんは、キラキラした笑顔で僕たちに感謝の言葉を述べられた。
とはいえ、僕もそれに対してどうコメントしていいか分からず、車内に少々気まずい空気が流れる中、僕は車をスタートさせた。
絢乃さんと義母は会社へ着くまでに、二人で相談して決めたという「自分なりの会長としてのあり方」について、僕に語って下さった。
まだ現役の高校生だった絢乃さんは基本的に学業優先で、出社するのは学校が終わってから。出退社時には僕が車で送迎する。そして、彼女が不在の時には義母が会長の業務を代行することでその穴を埋める。
ただ、義母はあくまでも会長の〝代行〟でしかないので、会社やグループの経営に関する決定権は持たず、決裁などの権限はすべて絢乃さんが持つのだと。これで、親子間での方針の食い違いや分裂・派閥争いなどが起こることを避けられるのではないか、と。
「――なるほど。それなら、親子で権力争いや派閥争いが起きる心配はなさそうですね。絢乃会長おひとりに、すべての権限が集中しているわけですから」
僕がそう納得すると、それは決してワンマン経営ということではなく、社長や専務などと会議で話し合い決めていくつもりなのだと絢乃さんはおっしゃった。
そういえば義父も、そういう経営方針をとっておられたなぁと僕は思った。やっぱり絢乃さんは彼の後継者にふさわしい。
平和主義者である僕は、社内で権力争いなんて起こしてほしくなかったし、代替わりでいきなり経営方針を変えられたら他の社員たちだって戸惑ってしまう。
もしかしたら彼女は、僕が安心してこの会社で働き続けられるようにと考えて下さったのではないだろうか……。
そんな彼女に、僕は心からのエールを送りたくなった。
「――絢乃さん」
「うん?」
「あなたはこれから、きっと険しい道を歩んでいくことになると思います。でも、あなたは決してひとりじゃないです。僕も、加奈子さんも、そして……亡くなったお父さまもお側にいますから。あなたのことは、絶対にお守りしますから」
そんな言葉が、口からすらすらと出てきた。それは彼女へのエールでもあり、そして僕自身の決意表明でもあったと思う。
秘書としても、彼女に惚れた一人の男としても、彼女の一番の支えになっていこうと。
すると、義母も僕に続いて彼女を励ました。「私たちが全力でサポートするから、いつでも頼ってほしい」と。
「……うん。ママ、桐島さん、ありがとう!」
僕と母親からの励ましに勇気づけられたらしい絢乃さんは、キラキラした笑顔で僕たちに感謝の言葉を述べられた。