「スライムさん、ここにある薬草、なんだか小さくない?」
カウンターにならんでいる薬草は、いつもよりも小ぶりに見えた。
気のせいだろうか。
でも、7ゴールド、という値札の大きさと比べると、やっぱり小さい。
「そうですね、ちいさいですね」
「どうして小さいの?」
「さむいからですね」
「そっか。雪の下でも薬草って生えるの?」
「はい! いつでも!」
「へえー」
私は納得したけれども、あたらしい疑問がうかんだ。
「それなのに同じ値段なの?」
スライムさんは不思議そうに私を見た。
「薬草は、いつもの大きさが7ゴールドで、小さくなっても7ゴールドだと、なんだか、変かな、と思って」
「へんですか?」
「だって、いつもよりすくないわけでしょ? それなのに同じ値段だから」
「!! なるほど! じゃあ、ただにします!」
「それはだめ!」
「どうしてですか!」
「お店だから! お仕事だから!」
「むむむ……!」
スライムさんはぷくーっ、とふくらんで、まだ不満そうだった。
「まあ、小さい薬草しかできないっていうことは、同じ値段でもしょうがないよね」
「それはいけませんよ!」
スライムさんがぴょん、とはねた。
「おおきさがちがうのに、おなじはよくない! とえいむさんがいったんじゃないですか!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「あ、でも、そんなに変わらないし……」
「いえ! ぼくは、きょうから、ねだんをやすくします! ただです!」
「それは安いって言わないから!」
「これはえいむさんのせきにんですよ!」
「私の!?」
「しってますか! こういうのは、りーだーしっぷ、っていうんです!」
「……? えっと……? ……もしかして、言い出しっぺ?」
「それです!」
合ってた。
スライムさんは薬草をカウンターの中から取り出して、カウンターの上に持ってきた。
「これはもうだめです。7ごーるどのしかくがありません。だめなやくそうです」
「だめではないよ」
「もう、このやくそうは、やくそ、くらいです」
「やくそ?」
う、がなくなった、と言いたいみたいだ。
「ねだんがおなじなのに、うりものがいつのまにかちいさくなっている。これはさぎです!」
「そこまでは言ってないよ!」
「きょうから、6・5ごーるどです!」
「なにそれ」
「ちょっとちいさいので、ちょっと、やすくします!」
考え方はわかるけど。
「お金はどうするの?」
「0・5ごーるどの、おつりです」
「0・5ゴールドって?」
「……おかねをはんぶんに、きります!」
「切っちゃダメだよ!」
「どうしてですか?」
「お金を半分にしても、半額としては使えないよ!」
「じゃあどうやって0・5ごーるどにすればいいんですか!」
スライムさんは、ぴょんぴょんぴょんぴょんはねた。
「だから、それはもうやめて、いつもどおり……」
「ぼくに、さぎしになれっていうんですか! 6・5ごーるどのものを、7ごーるどでうって、たがくのもうけをだして、ぼうりをむさぼり、まちのひとたちを、びんぼうにしろっていうんですか!」
「ぼうり?」
「ぼくはもう、よろずやをする、しかくがありません!」
「ちょっとちょっと!」
「もうやめます!」
「ちょっと待ってよ!」
「このままやくそうをうっていたら、ぼくは、ぼくは、うらしゃかいのていおうです!」
スライムさんはカウンターの上でブルブル震えていた。
「スライムさん、だいじょうぶだよ、薬草の値上げでみんなが貧乏になったりしないから」
「なります! ならないなら、します!」
「しないで!」
このよろず屋にあるものすべてを投入したら、そういうこともできてしまいそうだ。
いったいどうしたら……。
……そうだ。
「スライムさん」
「えいむさんのことばは、もう、ぼくにはとどきません……」
「薬草って、あったかい季節で、大きく育つときもあるよね?」
「……」
返事がない。
「あるよね?」
「……とくべつにこたえます。あります」
スライムさんは特別に答えてくれた。
「大きい薬草を、7ゴールドで売ってたこともあったよね?」
「……あります」
「でもそのときは、スライムさんは、高くして売らなかったよね?」
「はい」
「ということは、そのぶん、スライムさんは損をしてたよね?」
「……?」
スライムさんは首をかしげるようにした。
「大きいときにも同じ値段で売ってたんだから、小さいときに同じ値段で売ってもいいと思うんだけど」
小さいときに得をしているのだとしたら、大きいときには損をしていた。
だったら、ちょうどいいんじゃないだろうか。
「それに、お客さんはちゃんと見て買ってたんだから、スライムさんがだまして売ってたわけでもないでしょ? なにも悪くないよ」
「……ぼくは、ぼうりをむさぼってませんか?」
「ないない」
「それなら、ぼくは、いままでどおりでいいんですか……?」
「いいよ!」
「はい!」
スライムさんは元気にぴょん、とはねた。
これで安心だ。
「おっと」
力が抜けたら、ちょっと近くにあったものにさわってしまった。
いけないいけない。
あれ?
「この、はがねの剣って、ちょっと大きさがちがうのに、同じ値段なんだね……。あ」
「え?」
スライムさんはぴょんぴょんはねるのをやめて、こっちを見た。
しまった。
カウンターにならんでいる薬草は、いつもよりも小ぶりに見えた。
気のせいだろうか。
でも、7ゴールド、という値札の大きさと比べると、やっぱり小さい。
「そうですね、ちいさいですね」
「どうして小さいの?」
「さむいからですね」
「そっか。雪の下でも薬草って生えるの?」
「はい! いつでも!」
「へえー」
私は納得したけれども、あたらしい疑問がうかんだ。
「それなのに同じ値段なの?」
スライムさんは不思議そうに私を見た。
「薬草は、いつもの大きさが7ゴールドで、小さくなっても7ゴールドだと、なんだか、変かな、と思って」
「へんですか?」
「だって、いつもよりすくないわけでしょ? それなのに同じ値段だから」
「!! なるほど! じゃあ、ただにします!」
「それはだめ!」
「どうしてですか!」
「お店だから! お仕事だから!」
「むむむ……!」
スライムさんはぷくーっ、とふくらんで、まだ不満そうだった。
「まあ、小さい薬草しかできないっていうことは、同じ値段でもしょうがないよね」
「それはいけませんよ!」
スライムさんがぴょん、とはねた。
「おおきさがちがうのに、おなじはよくない! とえいむさんがいったんじゃないですか!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「あ、でも、そんなに変わらないし……」
「いえ! ぼくは、きょうから、ねだんをやすくします! ただです!」
「それは安いって言わないから!」
「これはえいむさんのせきにんですよ!」
「私の!?」
「しってますか! こういうのは、りーだーしっぷ、っていうんです!」
「……? えっと……? ……もしかして、言い出しっぺ?」
「それです!」
合ってた。
スライムさんは薬草をカウンターの中から取り出して、カウンターの上に持ってきた。
「これはもうだめです。7ごーるどのしかくがありません。だめなやくそうです」
「だめではないよ」
「もう、このやくそうは、やくそ、くらいです」
「やくそ?」
う、がなくなった、と言いたいみたいだ。
「ねだんがおなじなのに、うりものがいつのまにかちいさくなっている。これはさぎです!」
「そこまでは言ってないよ!」
「きょうから、6・5ごーるどです!」
「なにそれ」
「ちょっとちいさいので、ちょっと、やすくします!」
考え方はわかるけど。
「お金はどうするの?」
「0・5ごーるどの、おつりです」
「0・5ゴールドって?」
「……おかねをはんぶんに、きります!」
「切っちゃダメだよ!」
「どうしてですか?」
「お金を半分にしても、半額としては使えないよ!」
「じゃあどうやって0・5ごーるどにすればいいんですか!」
スライムさんは、ぴょんぴょんぴょんぴょんはねた。
「だから、それはもうやめて、いつもどおり……」
「ぼくに、さぎしになれっていうんですか! 6・5ごーるどのものを、7ごーるどでうって、たがくのもうけをだして、ぼうりをむさぼり、まちのひとたちを、びんぼうにしろっていうんですか!」
「ぼうり?」
「ぼくはもう、よろずやをする、しかくがありません!」
「ちょっとちょっと!」
「もうやめます!」
「ちょっと待ってよ!」
「このままやくそうをうっていたら、ぼくは、ぼくは、うらしゃかいのていおうです!」
スライムさんはカウンターの上でブルブル震えていた。
「スライムさん、だいじょうぶだよ、薬草の値上げでみんなが貧乏になったりしないから」
「なります! ならないなら、します!」
「しないで!」
このよろず屋にあるものすべてを投入したら、そういうこともできてしまいそうだ。
いったいどうしたら……。
……そうだ。
「スライムさん」
「えいむさんのことばは、もう、ぼくにはとどきません……」
「薬草って、あったかい季節で、大きく育つときもあるよね?」
「……」
返事がない。
「あるよね?」
「……とくべつにこたえます。あります」
スライムさんは特別に答えてくれた。
「大きい薬草を、7ゴールドで売ってたこともあったよね?」
「……あります」
「でもそのときは、スライムさんは、高くして売らなかったよね?」
「はい」
「ということは、そのぶん、スライムさんは損をしてたよね?」
「……?」
スライムさんは首をかしげるようにした。
「大きいときにも同じ値段で売ってたんだから、小さいときに同じ値段で売ってもいいと思うんだけど」
小さいときに得をしているのだとしたら、大きいときには損をしていた。
だったら、ちょうどいいんじゃないだろうか。
「それに、お客さんはちゃんと見て買ってたんだから、スライムさんがだまして売ってたわけでもないでしょ? なにも悪くないよ」
「……ぼくは、ぼうりをむさぼってませんか?」
「ないない」
「それなら、ぼくは、いままでどおりでいいんですか……?」
「いいよ!」
「はい!」
スライムさんは元気にぴょん、とはねた。
これで安心だ。
「おっと」
力が抜けたら、ちょっと近くにあったものにさわってしまった。
いけないいけない。
あれ?
「この、はがねの剣って、ちょっと大きさがちがうのに、同じ値段なんだね……。あ」
「え?」
スライムさんはぴょんぴょんはねるのをやめて、こっちを見た。
しまった。