「えいむさん、いえ、ほしくないですか?」
私はよろず屋の椅子に座って、冬でもよく育つという薬草を見ていた。
だから聞きちがいかと思った。
「いま、家って言った?」
「はい」
「家はあるよ」
「えいむさん、せんようのいえですよ」
「私の?」
「はい!」
「そんなのむりだよ。あ、スライムさん、また高価なものを使おうとしてるんでしょ」
「ふっふっふ。えいむさんが、こうかなものをすきじゃないことは、ぼくはしってますよ」
そのわりには、何度も高価なものをタダでくれようとするけれども。
「だったらどうするの?」
「こうするんです」
「スライムさん、寒いよ」
私たちは外に出た。
人が通っていないところはたくさん雪が積もっている。
「ゆきがありますね?」
「うん」
「ゆきのいえを、つくりましょう」
「雪の家?」
「そうです! れいの、なんとか、というやつです」
「なんとか?」
「なまえなんて、かざりですよ! なまえこそがだいじです!」
「どっち!」
私は、スライムさんに、しっかりした上着と手ぶくろを借りた。
「つめたいですか?」
「ううん、平気」
雪玉をつくってみても、全然冷たくない。
「これを使ったら、雪合戦に負けないかも」
「えいむさん? まだやるきですか!」
スライムさんはぷるぷる震えた。
「それで、雪の家って、どうやってつくるの?」
「ゆきを、つみます!」
「やってみよう!」
私は、スライムさんに借りたスコップで雪を掘り始めた。
「……スライムさん。はあ、はあ」
私はスコップを雪にさした。
「大変じゃない?」
「そう、ですね」
スライムさんも、ぜいぜいしている感じだった。
でもなんとか、私の身長のちょっと下、くらいまでの高さの、雪の山ができた。
「これを、掘ればいいんだよね?」
「はい!」
私はスコップで、入り口をつくっていく。
「あ」
と思ったら、上から雪がくずれてきて、いまできた入り口が消えてしまった。
残ったのは、変な形の小さな雪山だ。
「くずれちゃった」
「うまくいきませんでしたねえ」
「どうすればいいのかな」
「しっかりかためたら、どうですか?」
「うーん。穴を掘るのが大変だよ?」
「そうですねえ」
「雪をしっかりかためて、それを積み上げていくのがいいのかな」
「それは、れんがをつみあげるような、ことですか?」
「うん」
「たいへんそうですよ」
「大変そうだね」
「うーん」
「うーん」
私はくずれてしまった雪山を見た。
中をつくろうとすると、くずれてしまう。
しっかりしようとすると、掘れない。
うーん。
「最初から、中が空洞になってればいいんだけどね」
「それですよえいむさん!」
「え?」
というわけで、スライムさんが用意した箱を、雪の上に置いた。
私の胸までくらいの高さだ。
そこに雪をのせていく。
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
スライムさんも、口に入れた雪を飛ばして手伝ってくれる。
中が空洞なので、さっきよりかんたんにできあがった。
それを上から、横からぐいぐい押して、しっかりかためる。
そして雪をたして、ぐいぐいやって。
最後に箱を抜く。
抜く。
抜く……?
「抜けないね」
「そうですね」
しっかりかためてしまったので箱が抜けない。
「こわれやすいはこにしますか?」
「壊れやすい箱?」
というわけで、スライムさんが用意した、薄い板の箱でつくってみた。
「よいしょ、よいしょ」
雪をしっかりかためたら、箱を、中から、クギのようなものを抜いていく。
すると、箱がバラバラに壊れた。
「できました!」
「できたね!」
さっきまで箱だった板を中から出して、完成!
「さっそくはいってみましょうよ!」
スライムさんが、ぴょんぴょん、と中に入っていく。
「どう?」
「かぜがきません!」
「私も入っていい?」
「どうぞどうぞ」
と思ったけど、なかなかせまい。
しっかりした上着を脱いで、それでもせまい。
体をちぢこまらせて、なんとか入れた。
「あ、本当だ」
下はやっぱり雪だから冷たい。
でも、風は来ない。
室内、という感じがした。
「すごい!」
と私はつい興奮して、立ち上がろうとしてしまった。
「わ!」
「わわわ!」
思いっきりぶつかった雪がくずれてきて、私たちは埋まってしまった。
「わわわ!」
「ははは!」
私はよろず屋の椅子に座って、冬でもよく育つという薬草を見ていた。
だから聞きちがいかと思った。
「いま、家って言った?」
「はい」
「家はあるよ」
「えいむさん、せんようのいえですよ」
「私の?」
「はい!」
「そんなのむりだよ。あ、スライムさん、また高価なものを使おうとしてるんでしょ」
「ふっふっふ。えいむさんが、こうかなものをすきじゃないことは、ぼくはしってますよ」
そのわりには、何度も高価なものをタダでくれようとするけれども。
「だったらどうするの?」
「こうするんです」
「スライムさん、寒いよ」
私たちは外に出た。
人が通っていないところはたくさん雪が積もっている。
「ゆきがありますね?」
「うん」
「ゆきのいえを、つくりましょう」
「雪の家?」
「そうです! れいの、なんとか、というやつです」
「なんとか?」
「なまえなんて、かざりですよ! なまえこそがだいじです!」
「どっち!」
私は、スライムさんに、しっかりした上着と手ぶくろを借りた。
「つめたいですか?」
「ううん、平気」
雪玉をつくってみても、全然冷たくない。
「これを使ったら、雪合戦に負けないかも」
「えいむさん? まだやるきですか!」
スライムさんはぷるぷる震えた。
「それで、雪の家って、どうやってつくるの?」
「ゆきを、つみます!」
「やってみよう!」
私は、スライムさんに借りたスコップで雪を掘り始めた。
「……スライムさん。はあ、はあ」
私はスコップを雪にさした。
「大変じゃない?」
「そう、ですね」
スライムさんも、ぜいぜいしている感じだった。
でもなんとか、私の身長のちょっと下、くらいまでの高さの、雪の山ができた。
「これを、掘ればいいんだよね?」
「はい!」
私はスコップで、入り口をつくっていく。
「あ」
と思ったら、上から雪がくずれてきて、いまできた入り口が消えてしまった。
残ったのは、変な形の小さな雪山だ。
「くずれちゃった」
「うまくいきませんでしたねえ」
「どうすればいいのかな」
「しっかりかためたら、どうですか?」
「うーん。穴を掘るのが大変だよ?」
「そうですねえ」
「雪をしっかりかためて、それを積み上げていくのがいいのかな」
「それは、れんがをつみあげるような、ことですか?」
「うん」
「たいへんそうですよ」
「大変そうだね」
「うーん」
「うーん」
私はくずれてしまった雪山を見た。
中をつくろうとすると、くずれてしまう。
しっかりしようとすると、掘れない。
うーん。
「最初から、中が空洞になってればいいんだけどね」
「それですよえいむさん!」
「え?」
というわけで、スライムさんが用意した箱を、雪の上に置いた。
私の胸までくらいの高さだ。
そこに雪をのせていく。
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
スライムさんも、口に入れた雪を飛ばして手伝ってくれる。
中が空洞なので、さっきよりかんたんにできあがった。
それを上から、横からぐいぐい押して、しっかりかためる。
そして雪をたして、ぐいぐいやって。
最後に箱を抜く。
抜く。
抜く……?
「抜けないね」
「そうですね」
しっかりかためてしまったので箱が抜けない。
「こわれやすいはこにしますか?」
「壊れやすい箱?」
というわけで、スライムさんが用意した、薄い板の箱でつくってみた。
「よいしょ、よいしょ」
雪をしっかりかためたら、箱を、中から、クギのようなものを抜いていく。
すると、箱がバラバラに壊れた。
「できました!」
「できたね!」
さっきまで箱だった板を中から出して、完成!
「さっそくはいってみましょうよ!」
スライムさんが、ぴょんぴょん、と中に入っていく。
「どう?」
「かぜがきません!」
「私も入っていい?」
「どうぞどうぞ」
と思ったけど、なかなかせまい。
しっかりした上着を脱いで、それでもせまい。
体をちぢこまらせて、なんとか入れた。
「あ、本当だ」
下はやっぱり雪だから冷たい。
でも、風は来ない。
室内、という感じがした。
「すごい!」
と私はつい興奮して、立ち上がろうとしてしまった。
「わ!」
「わわわ!」
思いっきりぶつかった雪がくずれてきて、私たちは埋まってしまった。
「わわわ!」
「ははは!」