「なんで仕事休んだくらいでそうなるんだよ、今日は有給取ったんだ、大事な話があってな」

「なんだよ大事な事って、有給まで取って来るほどの事か?」

「親父の事なんだ」

「なんだよ突然」

 すると和也の表情は突如真剣な眼差しに変わった。

「親父、母さんと一緒に埼玉に出てきて俺達と住まないか?」

 あまりに突然の言葉に驚愕の表情を浮かべる和義。

「なにを言ってるんだ突然、そんな事出来る訳ないだろ!」

「突然言ってるわけじゃないんだよ、前から考えていたことなんだ、この事はさっき母さんにも話したんだけど、俺たち今埼玉に家を建ててるのは知ってるだろ? その家がもうすぐ完成するんだけど、実はその家に親父たちの部屋も作ったんだ」

「そんな事しなくても良いのに」

「良いんだよついでだから」

「ついでって、ついでに一部屋増やしたのか? その分建築費も高くなったろ」

 父である和義の問いかけに笑みを浮かべ応える和也。

「一部屋増えたところで大して変わらないよ、それより俺達と一緒に暮らしてほしいんだ」

「何言いだすんだ突然、俺達に生まれ育ったこの土地を捨てろと言うのか、代々守り抜いてきた家を手放せと言うのか?」

「聞いてくれ親父、この辺も災害危険区域に指定されただろ? 何かあったらと思うと心配なんだよ」