ここで和也に代わって由美が説得にかかる。

「お義母さん、お義母さんたちがこの土地を守っていきたいと言う気持ちも分かります。でも和也さんがこの土地を離れてしまった以上お義母さんたちの跡を継ぐ者がいないじゃないですか、一度はあたし達もゆくゆくはここに戻ってくることも考えました。でもこの土地は不便すぎるんです! それにさっきも話した通りあたしたちがこの提案をしたのにはお義父さんの為でもあるんです」

「車の事?」

「そうです、このあたりのような田舎道でも事故が起きないとは限りませんよね、今日のように街に出てしまえばなおさらです」

「そうね、でも確率は都会よりは大きくないんじゃない? 大きな事故にもならないだろうし」

 幸代がわずかに反論の言葉を口にするがさらに続ける由美。

「その確率をゼロにしなければいけないんです、万が一にでも事故を起こしてよそ様にご迷惑をかけてしまったらどうするんです? 事故によって大きな後遺症が残ったり、他人の命を奪ってしまう事にもなりかねないんです! それにここは大雨が降った時がけ崩れの危険があるじゃないですか、シーズンが来るといつも心配でならなかったんです」