この時幸代は心配そうな表情を浮かべている。

「もし親父が車に乗って事故でも起こしたらどうする? 最近そう言う事故多いじゃない、そうなってからでは遅いんだ」

「確かにそうね、でもここに住んでいた方がまだましなんじゃない? この辺は街に出てもまだまだ田舎だし」

「確かにそうかもね、でもうちの方だってまだそれ程都会じゃないんだよ、埼玉でも中西部の方だからね、何より大通りからも離れているからそれ程危なくはないと思うよ。それに引っ越し先の住宅街の中にクリニックもあるから引っ越したら一家でそこにお世話になろうと思ってるんだ。ここは近所にそういう所ないし、実家から街に行くだけでも随分かかるでしょ? その事を考えたら俺達と一緒に住んだ方が良いと思うんだ」

「確かにそうだけど、でも代々受け継いだこの土地を離れるのもねぇ」

「慣れ親しんだ土地を離れたくない気持ちもわかるけどこの土地は不便でしょ、買い物とかはどうしてるの?」

「買い物は最近デマンドタクシーがあるから」

「それにしたってタダじゃないんでしょ?」

「普通にタクシーに乗るよりは安いけど確かにお金はかかるわね、でもお金がかかるといっても数百円よ、それに定期的に移動販売の車だって来てくれるのよ」