署へと連行された和義は取調室に連れていかれると、

まず名前や住所などを聞かれたのち取り調べを受ける事となった。

「渡辺さん、どうして運転なんかしたの、免許証返しちゃったんでしょ? 無免許運転になるんだよ分かる?」

 担当の五十嵐巡査の言葉にひどく落ち込み、

うつむきながら応える和義。

「すみません、普段は息子が買ってくれたセニアカーに載っていたんですが、今日はセニアカーのバッテリーを充電しておくの忘れてしまって、嫁の由美さんがいつでも送り迎えするとは言ってくれていたんですがわざわざ手を煩わせては申し訳ないと思って、少しの距離だから大丈夫だと思って車を運転してしまいました」

「だからって免許もないのに運転しちゃダメでしょ! 自転車に乗るとか他に方法はなかったの?」

「それも考えましたが、長いこと自転車に乗っていなかったので乗れるか心配で」

「だからって無免許なのに車を運転したられっきとした犯罪なんだよ、立派な交通違反、分かる?」

 かなり強い口調で言う五十嵐の言葉に和義はしょんぼりとしてしまう。

「すみません、車だったら最近まで運転していたので車種は違っても大丈夫だと思って、息子が何度も免許証を返納するようにって言っていた意味がやっと分かりました」

「自分ではできてるように思えても体は若いころのようにはいかないんです、これでわかったでしょ」

「そうですね」

「あなたは先程お嫁さんの手を煩わせたくないといったけど、結果的に大きな迷惑をかけたことになったんだよ」

「そうですね、申し訳なく思ってます」

「お嫁さんだけじゃないでしょ」

「もちろん私が起こしてしまった事故でけがをしてしまった皆さんに対しても申し訳ないと思ってます」