その頃電話口から大きな衝撃音を聞いた為嫌な胸騒ぎがした由美は、

不安な気持ちに陥りながらも自転車で急ぎクリニックに向かっていた。

　息を切らしようやくクリニックにたどり着くと、

そこには一台のパトカーと数台の救急車が止まっており、

傍らでは和義が警察官により何やら話を聴かれていた。

　そこへ慌てた様子で由美が駆け込んでいく。

「お義父さん何してるの」

「由美さん済まない、やってしまった」

　そこへ一人の警察官が由美に尋ねる。

「お嫁さんですか？」

「はい、この度は父が申し訳ありませんでした」

「こういうことがあるから高齢者の運転は控えてもらったほうがいいんですよ、とにかく免許証見せてください」

警察官が言うが二人は困ってしまった。

それでも真実を言うしかないと思った由美はとても言いにくそうにしながらも思い切って口を開く。

「申し訳ありません、父は免許証を返納してしまって持ってないんです」

「なに持ってないの？　無免許運転じゃない、それなのにどうして車の運転なんてさせたの」

　そこへ由美を庇うように和義が口を開く。