「ただごめんな、母さんのためにもう一台買ってあげたかったんだけど一台しか買えなかったんだ」

「良いのよあたしの分は、あたしの場合はほとんど出かけるようなこともないし、出かけるといってもご近所さんだけだろうから、それにそんな高いもの何台も買えないことくらいわかるわ」

「ほんと悪いな、もう少し生活が落ち着いたら母さんの分も買うから」

「だから無理しなくていいんだってば、こんなもの買うお金があったら少しでも生活費に回しなさい、この家のローンだって大変なんでしょ?」

「ありがとう母さん」

 それから和義はどこへ行くのにもセニアカーを利用するようになり、

近所の友達も増えた彼はこの日もお向かいのおばあさんである高野早苗さんとともに近所のクリニックに向かった。

ところが事件が起きたのは翌週の火曜日のことだった。

この日もクリニックに向かおうとしていた和義であったがセニアカーのバッテリーを充電しておくのを忘れた事に気が付いた。

(しまった、バッテリーの充電しておくのを忘れた、これじゃあ行ったは良いが帰ってこられないな)