「このことはこっちに来る前に散々話しただろ、だから親父の車はこっちに来る前に手放してしまったじゃないか、まさか俺の車を運転するつもりでいるわけじゃないよね、お願いだから言うことを聞いてくれ! どこか出かけるときは俺か、俺が仕事でいないときは由美が乗せて行くから、クリニックに行く時だって乗せて行ってもいいし、同じ住宅街の中にあってそれほど遠くないからこのセニアカーで行ってもいい」

 和也の説得に観念した和義。

「分かったよ、仕方ないな、免許を返せばいいんだろ?」

「分かってくれたか」

 すると和也は配達員に対し身内でもめてしまい待たせてしまったことを謝罪する。

「すいませんお待たせしてしまって、とりあえずそこ置いといてください」

 和也の声に従い二人の配達員は積んできたセニアカーをトラックから降ろすと、ガレージの隅に置き一通り操作説明をすると帰っていった。

 配達員が帰った後和義は息子の和也に対し申し訳なさそうに尋ねる。

「だけど良いのか和也、セニアカーって結構するんだろ? 新居も建てたばかりなのにほんとはこんなの買う余裕なんてないんじゃないのか? 年金から少しくらい出そうか?」

「親父はそんなの気にしなくていいんだよ、俺たちは親父が少しでも事故にあうリスクが減ればそれでいいんだから」

 和也は母親の幸代に対し一言詫びる。