「まだ何かあるの親父」

「何があるってわけでもないんだが、この土地を離れるとなると仏壇をどうしようかと思ってな? そのままにしていくわけにもいかないし、ああいった物はやたらと動かせないだろ? それに墓はどうする、ここまで通うには距離があるだろ」

「そのことなんだけど、墓はもう少し近くの霊園に移したらどうかと思うんだ、通いきれない距離じゃないけどここだとやっぱ遠いだろ?」

「仏壇はどうするんだ」

「当然仏壇も新居に移そう、そういう専門の業者があるそうなんだ、墓もそうだけど仏壇もちゃんとお坊さんに供養してもらってね」

「そうか、そういう業者があるんだな? 知らなかったよ」

「実はもう何社か一斉に見積もりだしてもらってめぼしい所見つけてるんだ! そのほうが各社仕事欲しいからぎりぎりまで安くしてくれるんだって」

(和也のやつ俺たちに同居の件を聞く前からもうそんなことしていたのか、やること早いな?)

「新築の家に俺たちの部屋を作ったって言ったな、もし俺たちが同居を断ったらどうするつもりだったんだ?」

「その時はとりあえず物置にでもしたらいいと思ってたよ、そんな風にしなくても使い道はほかにもあるだろうしね」

この時和義は自らの意思を固めた。

「わかった、和也たちと同居することに同意しよう、いいだろ母さん」

 その問いかけに笑顔で応える幸代。

「いいも悪いも、あたしは初めから同居することに賛成よ」

「そうだったのか?」

「そうよ、孫たちと暮らすのが今から楽しみだわ」

 こうして和義たちは和也たち一家と同居することが決まった。