初心に帰ろうと思う。
初心。
つまり、女の子といちゃいちゃにゃんにゃんするための計画を自ら企て、行動に移すということだ。
無論、ターゲットはその豊満ボディで毎日私を煩悶させているフィリアである。
つい先日、私は今の関係もまあそこまで悪くないんじゃないかな? って感じに、フィリアを性奴隷にする選択肢をふいにした。
しかしそんなものは今となってはゴミ箱に剛速球ストレートである。あの時の私はアホだった。
ことは一週間前にさかのぼる。
積み上げたものは裏切らない(キリッ)とかかっこつけた日の翌日から、それは始まった。
「もっともっとお師匠さまのお力になれるよう、今日から誠心誠意頑張らせていただきます!」
と、開口一番にそう宣言したフィリアが、今まで以上に私の世話を焼こうとし始めたのである。
私の役に立ちたい一心で、自分にできることを一つでも増やそうと努力しているのだろう。
その気持ちは素直に嬉しい。
しかし、しかしだ。
「お師匠さまのお着替えを手伝わせていただきます!」
と、私が薄い肌着の時にその魅惑の肉体を毎日のように押しつけられたり。
「お料理を手伝わせてほしいんです! お師匠さまにばかり任せてはいられません!」
なんて言ってきたので手伝ってもらったら、なぜかなにもないところで転んで牛乳を自分自身目掛けて零してしまって、白い液体が顔から胸にかけて滴っているフィリアの姿を目の当たりにすることになったり。
「後学のために横で見させていただけませんか……?」
暇つぶしの小遣い稼ぎに魔導書を適当に書いていると、そんな感じで前屈みで覗き込んでくるものだから、視界の端に深い谷間が入ってきてまったく集中できなかったり。
挙げ句には「最大限お師匠さまの役に立つためにお師匠さまの生活を詳しく知りたいんです!」と。
手が空いている時はほぼずっと私のそばにいて、ふっとした時に割としょっちゅう無自覚に誘惑してくる。
そのくせしてですよ。
なぜかお風呂だけは「お師匠さまのあられもない姿を私ごときが見るなんておこがましいです……!」とかよくわかんないことを言って、一緒には入ってくれないの。
なんで……なんでそんな生殺しをするんですか……?
そんなこともあって最近はいつも悶々としていて、一人で少し落ちつける時間が欲しいのに、今の状況では仮に一人になれたとしてもいつフィリアがやってくるかわからない不安が付き纏う。
入浴中は例によって一応一人になれるけれど、入浴前後のお手伝いのためとかなんとかでフィリアが浴室の扉の前に待機していたりする。そのせいで下手なことができなくて欲求不満なんです。
もう、奴隷を買うと決断した日と同じ、我慢の限界だった。
とは言えしかし、先日の私の、今の関係もそこまで悪くないという考えも、まあ一応はわからなくもない。
私とて、無理矢理どうこうする気はなかった。
そう、無理矢理はな……。
ふふ、ふふふ……ふははははははっ!
「お師匠さま、今日は機嫌がよさそうですね?」
窓の外はすでに真っ暗で、空に星が瞬いている。
毎日のように行われるフィリアの魔法特訓を終え、お互いにお風呂も入り終えて。
いつものように「お手伝いをさせてください!」とお願いをしてきたフィリアとともに、今は夕食の準備中だ。
初めこそ手つきが危なっかしかったフィリアであるが、この一週間で少しずつ慣れてきた印象を受ける。
「機嫌がいい、か。まあ、そうかもしれないな」
この一週間、私は目の前に人参がぶら下げられた空腹の馬のような気分で生きてきた。
手を伸ばせば届きそうな位置にあるのに、どうしてもあと一歩分だけ届かない。そんな悶々とした日々。
しかし今日はそれだけでは絶対に終わらせない。
今日こそ、今日こそはフィリアといちゃいちゃにゃんにゃんしてやるのだ。
私を悶々とさせているすべての元凶である豊かな御本山さまを、今日こそは我が手のひらで踊らせてやるのである。
そのための仕込みの用意はすでにできている……。
あとは仕掛けるだけだ。
これから先の、みだらで甘美な未来を妄想し、思わず含み笑いが漏れる。
「えへへ。今日のお師匠さま、本当に幸せそうでこっちまで嬉しくなっちゃいますっ! やっぱりあのお飲み物が楽しみなんですか?」
「ああ。そんなところだよ」
先日、フィリアと二度目の買い物に出かけた際に、私は数量限定のミックスジュースを買って帰った。
フィリアは私がそれを楽しみにしていると思っているようだ。
実際には匂いを嗅いでみて、今回の計画の仕込みをごまかすのにちょうどいいと思ったから買ったに過ぎないのだが。
しかし確かに楽しみであることには変わりはないと言える。
「お師匠さま、こっちは終わりました! まだ他にお手伝いできることはないですかっ?」
「そうだね。じゃあ、この野菜スープを見ててくれないかな。私は飲み物を入れるから」
「はいっ!」
フィリアに今やっていた作業を任せて、私は冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫とは言っても、前世のそれとは仕組みは違う。この世界は科学がろくに発展していない代わりに、魔法が台頭している。動力源は魔力だ。
その冷蔵庫から、さきほどフィリアとも話したミックスジュースを取り出す。
私の分とフィリアの分。棚からコップを二つ取り出し、中身が均等になるように注いでいく。
数量限定の人気商品だけあって、二人分も注げば中身はすっかり空になってしまった。
ここで一旦、フィリアの様子を窺う。
フィリアは私に任されたことを果たそうと、真剣な顔でスープを睨みつけている。
私がここでジュースになにをしても気づくことはなさそうだ。
「……ふふふ」
笑みを漏らしながら、私はこっそりと懐にしまっていた小瓶を取り出した。
ポケットの中に違和感なく隠せてしまうほどの、ほんの二、三立方センチメートルしかない小さな瓶。
その中には、異様なほどの濃さの桜色の液体が充満している。
小瓶の蓋に手をかけて、誤って中身をこぼさないよう、慎重にそれを開けた。
その直後、瓶を満たす液体が発する強烈な香りが漏れ出して、私の鼻を襲った。
甘く、とろけるような魅惑の香り。
ほんの少し嗅いだだけだというのに、ビクッ、と全身が反応しかけて、慌てて蓋を閉じる。
――淫魔のエキスを配合してつくられた、液体薬。
この世界には魔法があるように、魔族や魔物などと呼ばれる不思議生物も存在する。
というか、私だって前世の現代日本には実在していなかった空想種族、エルフだ。
そしてそんな摩訶不思議生物の一つに淫魔がある。
別名をインキュバス、あるいはサキュバス。
その名の通り、存在自体がR18指定を受けてもおかしくないような、えっちな種族だ。
淫魔の体液は、淫魔以外のほぼすべての生物の発情を促し、快楽の度合いを引き上げる効果があるという。
淫魔はそうして冷静さを奪ったのち、さらに洗脳の魔法をかけることによって、対象を淫魔自身の虜とし、完全なる支配下に置く。
一度そうして精神を支配されたが最後、死ぬか飽きられるまで、ずっと淫魔に操られることになる。仮に解放されたとしても、快楽以外の刺激からはまったくの無反応な廃人に成り果てていることがほとんどだとか。
それらもあって、淫魔は非常に危険な種族だとされている。
そんな淫魔のエキスを配合し、効果を薄めたものがこの液体である。
効果を薄めたとは言っても、淫魔の体液自体がそれだけで人の心を容易く侵し尽くすと言われているほどのものだ。
ほんの一滴程度でも非常に高い効果を発揮するようで、たったこれだけの量だというのに、同じような薬の中でも一番値段が高く、そして数もこれ一つしかなかった。
買い物の最中、フィリアの目を盗んで密かにこれを購入するのは至難を極めた。
至難すぎたので店主を幻覚魔法に嵌めて、幻覚の中で取引を行って薬をかっぱらってきたほどだ。
無許可でそういう魔法をかけるのは犯罪だが……バレなければ犯罪ではないのである。
それに、ちゃんとお金は置いてきた。あくまで幻覚を通した取引をしただけだ。
そんなこんなで大変ではあったが、手に入れてしまえば後はこちらのもの。
香りや味をごまかすブラフとして甘さ過剰なミックスジュースなども買い漁りつつ、ついにここまで来ることができた。
「ふふふ、これでフィリアを……」
今回の私の計画はこうだ。
一。フィリアのミックスジュースにこの薬を入れる。
二。フィリアが夕食中にミックスジュースを飲む。
三。発情したフィリアが「体がおかしいんです」と私を頼る。
四。いつも世話を焼いてくれるフィリアの力になりたいとかそんな感じのいい感じことを言ってベッドイン。
よしんばフィリアが頼ってこなかったとしても、その場合、フィリアは私から離れて一人になろうとするはずだ。
そこに様子がおかしいから心配したとかなんとか言って訪ねていけば、異常な状態のフィリアに対し、自然と四の作戦を実行していける。
そして発情状態で思考能力が低下しているフィリアなら、単純に心配した体を装っている私を拒むことはしないだろう。
つまり無理矢理ではないということ……!
しかもこの計画なら後日落ちついた後でも、今の関係をさほど大きく壊してしまうこともない……はずだ。
ちょっとぎこちなくなるかもしれないが、すぐに元に戻るだろう。
なにせフィリアはその日の自分がおかしかったことを自覚しているだろうし、私はただそんなフィリアを心配しただけ、という設定だ。
二人とも、誰も悪くないのだから。
ふふふ……完璧な計画だな。我ながら末恐ろしい。
全に至りし者、《至全の魔術師》の二つ名は伊達ではないのだ!
全がなにかは知らんけど!
さあ、始めよう……!
今日こそ、今日こそが私の満願成就の時だ!
初心。
つまり、女の子といちゃいちゃにゃんにゃんするための計画を自ら企て、行動に移すということだ。
無論、ターゲットはその豊満ボディで毎日私を煩悶させているフィリアである。
つい先日、私は今の関係もまあそこまで悪くないんじゃないかな? って感じに、フィリアを性奴隷にする選択肢をふいにした。
しかしそんなものは今となってはゴミ箱に剛速球ストレートである。あの時の私はアホだった。
ことは一週間前にさかのぼる。
積み上げたものは裏切らない(キリッ)とかかっこつけた日の翌日から、それは始まった。
「もっともっとお師匠さまのお力になれるよう、今日から誠心誠意頑張らせていただきます!」
と、開口一番にそう宣言したフィリアが、今まで以上に私の世話を焼こうとし始めたのである。
私の役に立ちたい一心で、自分にできることを一つでも増やそうと努力しているのだろう。
その気持ちは素直に嬉しい。
しかし、しかしだ。
「お師匠さまのお着替えを手伝わせていただきます!」
と、私が薄い肌着の時にその魅惑の肉体を毎日のように押しつけられたり。
「お料理を手伝わせてほしいんです! お師匠さまにばかり任せてはいられません!」
なんて言ってきたので手伝ってもらったら、なぜかなにもないところで転んで牛乳を自分自身目掛けて零してしまって、白い液体が顔から胸にかけて滴っているフィリアの姿を目の当たりにすることになったり。
「後学のために横で見させていただけませんか……?」
暇つぶしの小遣い稼ぎに魔導書を適当に書いていると、そんな感じで前屈みで覗き込んでくるものだから、視界の端に深い谷間が入ってきてまったく集中できなかったり。
挙げ句には「最大限お師匠さまの役に立つためにお師匠さまの生活を詳しく知りたいんです!」と。
手が空いている時はほぼずっと私のそばにいて、ふっとした時に割としょっちゅう無自覚に誘惑してくる。
そのくせしてですよ。
なぜかお風呂だけは「お師匠さまのあられもない姿を私ごときが見るなんておこがましいです……!」とかよくわかんないことを言って、一緒には入ってくれないの。
なんで……なんでそんな生殺しをするんですか……?
そんなこともあって最近はいつも悶々としていて、一人で少し落ちつける時間が欲しいのに、今の状況では仮に一人になれたとしてもいつフィリアがやってくるかわからない不安が付き纏う。
入浴中は例によって一応一人になれるけれど、入浴前後のお手伝いのためとかなんとかでフィリアが浴室の扉の前に待機していたりする。そのせいで下手なことができなくて欲求不満なんです。
もう、奴隷を買うと決断した日と同じ、我慢の限界だった。
とは言えしかし、先日の私の、今の関係もそこまで悪くないという考えも、まあ一応はわからなくもない。
私とて、無理矢理どうこうする気はなかった。
そう、無理矢理はな……。
ふふ、ふふふ……ふははははははっ!
「お師匠さま、今日は機嫌がよさそうですね?」
窓の外はすでに真っ暗で、空に星が瞬いている。
毎日のように行われるフィリアの魔法特訓を終え、お互いにお風呂も入り終えて。
いつものように「お手伝いをさせてください!」とお願いをしてきたフィリアとともに、今は夕食の準備中だ。
初めこそ手つきが危なっかしかったフィリアであるが、この一週間で少しずつ慣れてきた印象を受ける。
「機嫌がいい、か。まあ、そうかもしれないな」
この一週間、私は目の前に人参がぶら下げられた空腹の馬のような気分で生きてきた。
手を伸ばせば届きそうな位置にあるのに、どうしてもあと一歩分だけ届かない。そんな悶々とした日々。
しかし今日はそれだけでは絶対に終わらせない。
今日こそ、今日こそはフィリアといちゃいちゃにゃんにゃんしてやるのだ。
私を悶々とさせているすべての元凶である豊かな御本山さまを、今日こそは我が手のひらで踊らせてやるのである。
そのための仕込みの用意はすでにできている……。
あとは仕掛けるだけだ。
これから先の、みだらで甘美な未来を妄想し、思わず含み笑いが漏れる。
「えへへ。今日のお師匠さま、本当に幸せそうでこっちまで嬉しくなっちゃいますっ! やっぱりあのお飲み物が楽しみなんですか?」
「ああ。そんなところだよ」
先日、フィリアと二度目の買い物に出かけた際に、私は数量限定のミックスジュースを買って帰った。
フィリアは私がそれを楽しみにしていると思っているようだ。
実際には匂いを嗅いでみて、今回の計画の仕込みをごまかすのにちょうどいいと思ったから買ったに過ぎないのだが。
しかし確かに楽しみであることには変わりはないと言える。
「お師匠さま、こっちは終わりました! まだ他にお手伝いできることはないですかっ?」
「そうだね。じゃあ、この野菜スープを見ててくれないかな。私は飲み物を入れるから」
「はいっ!」
フィリアに今やっていた作業を任せて、私は冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫とは言っても、前世のそれとは仕組みは違う。この世界は科学がろくに発展していない代わりに、魔法が台頭している。動力源は魔力だ。
その冷蔵庫から、さきほどフィリアとも話したミックスジュースを取り出す。
私の分とフィリアの分。棚からコップを二つ取り出し、中身が均等になるように注いでいく。
数量限定の人気商品だけあって、二人分も注げば中身はすっかり空になってしまった。
ここで一旦、フィリアの様子を窺う。
フィリアは私に任されたことを果たそうと、真剣な顔でスープを睨みつけている。
私がここでジュースになにをしても気づくことはなさそうだ。
「……ふふふ」
笑みを漏らしながら、私はこっそりと懐にしまっていた小瓶を取り出した。
ポケットの中に違和感なく隠せてしまうほどの、ほんの二、三立方センチメートルしかない小さな瓶。
その中には、異様なほどの濃さの桜色の液体が充満している。
小瓶の蓋に手をかけて、誤って中身をこぼさないよう、慎重にそれを開けた。
その直後、瓶を満たす液体が発する強烈な香りが漏れ出して、私の鼻を襲った。
甘く、とろけるような魅惑の香り。
ほんの少し嗅いだだけだというのに、ビクッ、と全身が反応しかけて、慌てて蓋を閉じる。
――淫魔のエキスを配合してつくられた、液体薬。
この世界には魔法があるように、魔族や魔物などと呼ばれる不思議生物も存在する。
というか、私だって前世の現代日本には実在していなかった空想種族、エルフだ。
そしてそんな摩訶不思議生物の一つに淫魔がある。
別名をインキュバス、あるいはサキュバス。
その名の通り、存在自体がR18指定を受けてもおかしくないような、えっちな種族だ。
淫魔の体液は、淫魔以外のほぼすべての生物の発情を促し、快楽の度合いを引き上げる効果があるという。
淫魔はそうして冷静さを奪ったのち、さらに洗脳の魔法をかけることによって、対象を淫魔自身の虜とし、完全なる支配下に置く。
一度そうして精神を支配されたが最後、死ぬか飽きられるまで、ずっと淫魔に操られることになる。仮に解放されたとしても、快楽以外の刺激からはまったくの無反応な廃人に成り果てていることがほとんどだとか。
それらもあって、淫魔は非常に危険な種族だとされている。
そんな淫魔のエキスを配合し、効果を薄めたものがこの液体である。
効果を薄めたとは言っても、淫魔の体液自体がそれだけで人の心を容易く侵し尽くすと言われているほどのものだ。
ほんの一滴程度でも非常に高い効果を発揮するようで、たったこれだけの量だというのに、同じような薬の中でも一番値段が高く、そして数もこれ一つしかなかった。
買い物の最中、フィリアの目を盗んで密かにこれを購入するのは至難を極めた。
至難すぎたので店主を幻覚魔法に嵌めて、幻覚の中で取引を行って薬をかっぱらってきたほどだ。
無許可でそういう魔法をかけるのは犯罪だが……バレなければ犯罪ではないのである。
それに、ちゃんとお金は置いてきた。あくまで幻覚を通した取引をしただけだ。
そんなこんなで大変ではあったが、手に入れてしまえば後はこちらのもの。
香りや味をごまかすブラフとして甘さ過剰なミックスジュースなども買い漁りつつ、ついにここまで来ることができた。
「ふふふ、これでフィリアを……」
今回の私の計画はこうだ。
一。フィリアのミックスジュースにこの薬を入れる。
二。フィリアが夕食中にミックスジュースを飲む。
三。発情したフィリアが「体がおかしいんです」と私を頼る。
四。いつも世話を焼いてくれるフィリアの力になりたいとかそんな感じのいい感じことを言ってベッドイン。
よしんばフィリアが頼ってこなかったとしても、その場合、フィリアは私から離れて一人になろうとするはずだ。
そこに様子がおかしいから心配したとかなんとか言って訪ねていけば、異常な状態のフィリアに対し、自然と四の作戦を実行していける。
そして発情状態で思考能力が低下しているフィリアなら、単純に心配した体を装っている私を拒むことはしないだろう。
つまり無理矢理ではないということ……!
しかもこの計画なら後日落ちついた後でも、今の関係をさほど大きく壊してしまうこともない……はずだ。
ちょっとぎこちなくなるかもしれないが、すぐに元に戻るだろう。
なにせフィリアはその日の自分がおかしかったことを自覚しているだろうし、私はただそんなフィリアを心配しただけ、という設定だ。
二人とも、誰も悪くないのだから。
ふふふ……完璧な計画だな。我ながら末恐ろしい。
全に至りし者、《至全の魔術師》の二つ名は伊達ではないのだ!
全がなにかは知らんけど!
さあ、始めよう……!
今日こそ、今日こそが私の満願成就の時だ!