「保護者の方に連絡はつきましたか」
「それがどうやら、いないみたいなんです。一応会社のほうへかけてみたら、マネージャーの方が来るそうで……」
看護師さんは複雑そうにしていた。
私に家族はいない。正確にはいなくなってしまった。
事務所の人も言葉を濁したのだろう。私の家族について公表する気は絶対になかったから、よかった。
安心しながら、私は自分の身体の手首を見る。包帯でぐるぐるにまかれて傷は見えないけど、幽体の私の手首には赤い線がハッキリと見える。
自殺は簡単じゃない、という書き込みをネットで見た。
飛び降りも、手首を切ることも、服薬もお勧めしない。