窓辺の向こうには川が見えて、手に力が籠る。
自分が招いた状況が、理解できていない。手首を切って意識が途絶え、気が付けば目の前にはベッドで寝かされる私の身体があった。
一方の私といえば朝に着ていた服のまま、病室で私を診る医者、看護師に認識されることなく、自分の身体の傍らに立っている。
今の私については、幽霊と表現するのが最も正しいのだろう。試しに看護師さんの前に立ってみるけど、誰にも認識されない。
でも、不思議なことに嗅覚はある。独特ののっぺりとした病院の匂いに、なんともいえない温度。激しい色を取り除いた病室らしい視界もあるし、看護師さんとお医者さんの会話も聞こえる。