「なんでカメラ避けてるんですか?」
「ネット、見てない……?」

 ファンといえど彼の呑気な言葉に驚いて、つい問いかけてしまった。彼は「ああ、炎上のこと? そんなの気にしてませんよ! 僕は貴女ををいつだって信じます!」と口角を上げる。

「それより何で僕のこと引っ張ったんですか? っていうか何で僕警備員に追われてるの? もしかして、声かけたから? あれっ?」

 自分の目にしか私が映っていないことを、彼はまるで理解していない。

 平然と私に縋るように言葉を紡いで、中庭の注目を一身に浴びている。

 夕光が奇跡的に彼を照らしているせいで、さながらスポットライトのようだ。

 ただ逆光になっているせいか、不気味さまで醸し出している。