どうにかして、死にたい。
私は立ち止まっていることも出来ず、ふらふらと歩いていく。
土砂降りだった空にはオレンジ色が滲んで、薬品の漂う廊下を染めていた。
面会を終えた患者の家族や知人たちが、ぽつぽつと五月雨のように病室を抜け、出入り口へと向かっていく。
「ごめん。さくらちゃん……でも、僕の代わりの先生もいい先生だから」
すぐ横の病室から、五十代くらいのお医者さんが出てきた。ぶつかりそうになるも、すり抜けたことで自分にはもう身体がないと実感する。
部屋の中をちらりとのぞくと、唇をとらせた水色のパジャマの女の子がいた。
すぐ後ろに人の気配を感じて振り返れば、さっき私を診ていた人とは別のお医者さんと看護師さんが話をしている。