慎くんが、私に好意を持ってくれてるのは何となく分かってる。それでも私から慎くんのサングラスの原因をきくとか、慎くんが何かを〝卒業〟しないから私から告白するとか、そんなのはおかしい気がした。

乙女心というものなのか。
私は慎くんから、私からじゃなく。
慎くんから言ってくるのを待ちたかった。


「陽葵」と、慎くんが私の名前を呼ぶ度に、笑顔になった。慎くんと体育の先生のところに行くために歩く廊下の道のりが、何よりも楽しかった。


仲が良さげな私たちを見ているからか。
慎くんがいなくて私1人の時、喋ったことも無いクラスメイトが「付き合ってるの?」と聞いてくる。

私は「付き合ってないよ」と、否定した。


「そうなの?でも、仲良いよね?」

「うん、委員会一緒だから」

「へぇ…」


何か言いたげな、クラスメイトに、私は何を言おうとしてくるのか分かった。


「じゃあさ、日向さんは、知ってるの?」

「…」

「慎って、なんでサングラスかけてるの?」


私じゃなくて、本人に聞けばいいのに。
そう思ってしまう私は、性格が悪いのか。
だって矛盾してる。
私だって本人に聞けないくせに…。


「…慎くんに、聞いてみれば…?」


慎くんは、私が聞けば、教えてくれるのかな…。それでも待つと決めた私は、私から聞くことは無いだろうと思う。