「──…日向さんって、太陽みたいだね」
それは月に1回の、委員会の会議が終わった後だった。各教室に戻り、私と慎くんだけの教室の中で、今会議で話あった『体育祭』のことをルーズリーフにまとめていると、それを横から見ていた慎くんにそう言われた。
太陽?どこが?
そう思ってイスに座っていた私は、今日は前の座席に座っている慎くんを見た。
慎くんが見ているのは、私の書いているルーズリーフ。そしてその上に書かれているのは、私の名前だった。
「これ、陽葵って読むんでしょ?日向陽葵って、ものすごく太陽イメージしない?」
私の名前を呼ぶ慎くんに、少し、ドキンと胸がなる。私の容姿ではなく、名前のことを言っているらしくて。
「…な、名前だけだよ。ほんとに名前負け…」
照れるのを隠しながら呟いた。だから顔を見られたくなくて、ルーズリーフに視線を戻す。
「そうかな?陽葵って名前も可愛いけど、日向さん普通に可愛いし…負けてないし」
「、」
「笑う顔、可愛いなって…思ったり…」
赤い、赤くなる。
頬が熱かった。
途中で、話すのをやめた慎くんは、「……って、恥ず、何言ってんだろ…」と、声が小さくなった。
「ごめん、忘れて」
そう言われても、忘れられるはずが無い。ドキドキと心臓がうるさい、さっきの会議のことなんてすっぽり忘れてる。
恐る恐る、顔をあげて慎くんを見た。
サングラスで上手く目は見えなかったけど、頬はすごく赤くなっているように見えた。
きゅ、と、心臓が、とまりそうになる。
「わ、わたし、も、」
私の声も、小さい。
けど、誰もいない教室の中では、耳に入る。
「ま、き、…くん、かっこいいな…って、思ってる…」
きっと、私の顔も赤い。
慎くんの顔も、赤く染まる。
目元は青いのに、頬は赤い。
慎くんは「恥ず……」と、その顔を両手でおさえた。しばらく、慎くんは顔をおさえたあと、指を顔からはなし、嬉しそうに顔を傾けた。
「……ひまり、って、呼んでいい?」って。
恥ずかしくて、けれども単純な私はそれに時間をかけてゆっくり頷いた。
雨に安心し、太陽を好きではない慎くんは、名前が太陽と言った私の名前を、嬉しそうに「陽葵」と言う。
そんな彼を見て、私は彼を好きだと思った。
好き。
気になる、のではなく。
好きの感情に変わった。
ああ、私は、慎くんに恋をしている。