男女とも、この雨の中の体育の場所は体育館だと思われたけど、女子が体育館で男子が筋トレメインと、外だけど屋根があるそういった場所での体育だった。
「聞きに行って良かった」と、慎くんは笑っていた。──どうして慎くんは運動できないの?そういう質問は、新庄くんのような〝おかん〟みたいな仲良さにやったら聞けることが出来るのだろうか?
同じ委員だからか、席が前後だからか、慎くんとは教室内でも話すようになった。慎くんの名前は慎唯斗と言うらしい。これは慎くんに聞いたわけじゃない。ただノートに書かれているそれをみて覚えただけ。
〝マキ〟があだ名の慎くん。誰も〝ユイト〟って呼ばない。
「慎くん、さっきたまたま先生にあって、場所きいたよ。男子も女子も今日の体育は運動場だって」
慎くんに笑ってそういえば、慎くんは「ほんと?ありがとう」と、笑みを見せてくれた。
私が〝唯斗くん〟って呼んだら、慎くんはサングラスの奥で驚く表情を見せてくるのかな?そう思ったら、何だか凄く恥ずかしくなった。
凄く喋るって訳でもない。
友達とか、そんなのでもないと思う。
ただ、委員が一緒で席が前後の人。
それなのにこんなにも慎くんといると、穏やかな気持ちになって、慎くんがいいな…と思ってしまうのは慎くんの事が気になっているからなのかな…。
「ううん、本当に運良く会っただけだから」
でも、その気になっているっていうのが、慎くんの〝サングラス〟のことなのか。
〝慎くん自身〟のことなのか、今の私には分からなくて。
慎くんのことを、知りたいと思う。
私は、どういう気持ちで慎くんを知りたいのかな。