そんな慎くんと関わるようになったのは、慎くんと委員会で同じになってからだった。誰もめんどくがる〝委員会役員〟なんてやりたくなくて。くじ引きで決まった男女1人ずつ選ばれる体育委員。


そのくじ引きが決まった時、先生が「慎、大丈夫か?」と、私の後ろに座る慎くんにそう言っていた。慎くんは「大丈夫です」と答えていた。


そしてそのすぐの休み時間、慎くんの前に座っている私は、同じクラスメイトである新庄(しんじょう)くんが慎くんに言っているのを聞いた。


「俺、図書委員だし、変わろうか?」


心配気味にかといって普通の口調で喋る新庄くんに「大丈夫だから」と笑っていた。


「そうか?無理ならほんとに変わるから」

「うん」

「一緒の女子って誰だった?」

「えっと、確か日向(ひゅうが)さん」


慎くんが、私の名字を言って。私はどうしてか心がドキン…となった。


「あ、そうなの?── 日向さん」


新庄くんが、前に座る私の名前を呼んできた。プリントを配るように後ろに振り向けば、そこには慎くんが自分の席に座っていて、新庄くんがその隣にたっている。


1度、瞬きをした私は、呼んできた新庄くんの方を見上げた。


「慎のことよろしくね」


私に使って優しく笑う新庄くん。


「ほんと大袈裟なんだよ」


呆れたように笑う慎くん。


「大袈裟ってなんだよ、心配なんだよ」

「お前は俺のおかんか」

「そうだよおかんだよ」

「ははっ…」


2人で笑っている光景を見ていた時、慎くんが私を見た。青いサングラスから慎くんと目が合う。慎くんの目の色は分からないけど、こうして見ると慎くんの目はタレ目だった。優しそうで、穏やかな印象。


1年生の頃は、〝サングラスなんてつけて不良なの?〟と思っていたことを、思い出していた。今では全く、違うのに。


「よろしく、日向さん」


そう慎くんに言われて、私も「うん、よろしくね」と笑った。
慎くんと会話をしたのは、それが初めてだった。