「…そっか」
「ごめんね」
「どうして謝るの?」
「迷惑かけて」
そんなことない…。
迷惑だなんて思ったことない。
「…本当は、室内のヒカリは大丈夫なんだ。多分、いま反応するのは太陽ぐらいで。ただ、手術終わりすぐカメラのフラッシュで気絶したことがあって。それ以来これが手放せなくなった」
「…」
「太陽を見ない限り、こんなのもう、必要ないし〝卒業〟しなきゃ…って思うんだけどね」
太陽を見ると、気絶してしまう。そんな後遺症。室内の電気などではサングラスを必要ないと…。それでも、気絶した事のある恐怖は、…忘れてはくれない。
「〝卒業〟しなくてもいいんじゃないかな…」
「ううん、した方がいい。だってさっきみたいにパニックになっちゃうから…。それでも気絶するかもって思ってしまうのが怖いの」
「そんなの当たり前だよ、誰だって気絶は怖い…」
「言ってもいい?」
「え?」
「俺、陽葵のこと、好きなの。それでも付き合おうとか言えないのは、陽葵に迷惑がかかるから。陽葵は優しいから…」
迷惑がかかるから…。
優しいから…。
「どうして迷惑がかかるの?」
「今みたいになるよ」
「今? ここに連れてきたこと?迷惑なんて思わないよ」
「うん、それでも、…陽葵が嫌だって来る時はあると思う」
私が?
こんなにも、慎くんが好きなのに?
「来ないよ」
「来るよ」
「……例えばどんなこと?」
私がそう聞けば、慎くんは黙った。
慎くんは言いづらそうにして。
私は慎くんから目をそらさなかった。逸らしちゃいけないと思った。
今、慎くんを受け止めなければきっと慎くんはこれから先、私に心を開いてくれないと思ったから。
「…自分の部屋、暗いよ。電気なんかつけたことない」
「薄暗い感じなの?」
「うん」
「見えるんだったら問題ないよ?」
「外で遊ぶのも…」
「うん」
「映画も。暗くて場所で明るいヒカリを見るのができない」
「…」
「花火も見ることできないし」
「うん」
「ほんとに俺、サングラス無かったら何も出来ないんだよ」
「うん」
「働くのも、できる範囲のも探さないといけないから…」
「私、まだ分からない…。慎くんの事を聞いても、私どちらかと言うとインドア派だし。花火も…。映画もDVD出るまで待てばいいし、大丈夫って思っちゃうの…」
「…」
「働くのだって、全てができないわけじゃないから…」
「…」
「慎くんは、一生、結婚とかしないの?」
「…」
「私は…、ヒカリを見ない事の〝卒業〟じゃなくて、慎くんが…私の気持ちを信じれない事の〝卒業〟が出来ればいいなって思う…」
「…」
「…私、さっき、慎くんがここに連れてきてって言ってくれたことすごく嬉しかったよ」