悩み事に耽っている時は、時間も早く過ぎるもので。

あっという間に下校時間になった。


図書委員には、日記みたいな物があって、毎日欠かさず私が書いていた。

「今日の貸出は15冊。返却は10冊と。」

「巴里!早くして!」

「は~い!」

記録をつけ終わって、図書室の鍵を閉めると、廊下で待っている麻也の元に向かった。

「巴里ってば真面目なんだから。春休みで先生も来ないんだし、適当に数えればいいんだって。」

「うん…」

だって後で本棚に戻すのは、私なんだし。

数が合わないと、なんだか嫌なんだもん。

そんな事を考えていると、向こうから走って来る恭平を見つけた。

事務室の前の廊下で、恭平と目が合った。

「巴里!」

恭平は屈託の笑顔で、思わずドキンとしてしまう。