「あれは……私が知らなかったんだよ。」

そう。

人の嫉妬や、悲しい気持ちなんて、これっぽっちも知らなかった。

それなのに、彼氏ができても、二人は変わらずに、友達でいてくれた。

それは私の事を、女だと見ていなかったから。


「男はどうなの?」

「ヤダよ。好きな女に、自分以外で仲のいい男がいるなんて。」

「何よ。さっきと言ってること、違くない?」

「だから!それでも巴里だけは、特別なんだよ!」

優斗は勢いよく、本を棚に入れた。


「とにかく、恭平の電話出てやれよ。」

私は返事をしなかった。

「巴里?」

夕べの、恭平の留守電を思い出してしまう。