その日は珍しく、優斗が図書室を訪ねてきた。

「めっずらし!優斗も本を読むんだね。」

「あのな。俺は本を借りに来たわけじゃねえよ。」

不機嫌そうに、優斗はカウンターに、手をついた。


「恭平からの伝言、伝えに来た。」

私は聞こえない振りをして、立ち上がった。

「巴里!」


分かってる。

あの事から、逃げちゃいけない事くらい。


「ねえ、優斗。」

「なに?」

「本、棚に入れるの、手伝ってくれる?」

「何だよ、それ。」

期待外れの答えに、優斗はカウンターを叩いた。

「いいでしょ。一人じゃ大変なんだもの。」

「仕方ねえなぁ。」

優斗は面倒くさそうにやってくると、私の腕から数冊の本を奪い取った。