優斗が私の側に寄った。

「来ないで。」

「……はっ?」

「私に構わないで。」

「えっ?ちょっと、巴里?」

昇降口に電気がついていなくてよかった。


こんな泣き腫らした顔なんて、誰にも見られたくない。


「あれ?巴里!今、帰り?」

私の身体が異常に反応した。

「もう先に帰ってると思った。優斗は?」

この声は、恭平だ。

振り向かなくても、私には分かる。

でも来ないでと思っても、身体は動かない。

心とは裏腹に、恭平を求めている。


そして恭平は、優斗と違って、私の涙に気づいてしまった。

「って…えっ?巴里、泣いてんの?」

「ううん……泣いてないよ!」

私は恭平に、背中を向けた。