「ううん。今は人いないし。大きな声出しても、大丈夫。」

私も初めてここからグランドを見た時は、同じ事を叫んだ。

彼女もきっと、そうだと思うから。


「実は私、サッカー部のマネージャーなんだ。」

「そうなんだ!」

知ってるくせに、私は知らない振りをした。

「ここから自分が活動している場所が見えるって、ちょっと感動。」

「うん。その気持ち、よく分かる。」

「ホント?なんだかあなたとは、気が合いそう。」

彼女さんは私に、手をさし出した。


「私は西口加絵。って、さっきカードで見たよね。」

「私は境田巴里(サカイダ マリ)。よろしくね。」

私は手を差し出す代わりに、にっこりと笑顔を作った。