ボヘミア~~ン♪ 的なイメージしか沸かないのだが、それだけで生活の糧を得ていけるのだろうか?

 この異世界にも、各地を旅をしながらジプシーさながらの放浪生活をしている集団がいるということが伺える。
 演奏される曲は、洋観の勝手な想像だが、おそらくはフォークロア的で牧歌的な民族音楽を思い浮かべるのがせいぜいだ。

 そもそも、この世界に存在する様々なエンターテイメント事情についての知識も皆無だ

 洋観は、五人きりの観客のアンコールをねだる熱視線に応えるべく、二曲目の準備に取り掛かる。

 続いては、日本の八十年代に流行った曲を聴かせる。

 この曲は、動画サイトでプロのミュージシャンが演奏していて気に入った曲だった。オリジナルをアコースティック・バージョンにアレンジされた曲を、懸命に耳コピして習得した曲だ。

 ビートルズのナンバーのように囁くように唄うのには適さない曲だし、歌唱力には自信のない洋観にとってはハードルが高いが、気張って唄ってみることにした。

 適度に距離を置いて洋観の唄を、思い思いの姿勢でくつろぎながら聴いている五人の女の子たち……と一人(匹)の元猫っ娘。

 ♪「ジャ――ン」♪

 すると、唄い終わった洋観のもとに再び女の子らが駆け寄ってきれて、彼の周りに輪ができた。

「『ポラロイド』とか『電話』とか、何のことか分からなかったけど、男の子が昔恋していた女の子のことをいつまでも忘れられなくて、ウジウジしている切ない恋物語なのね?」

「う、うう―ん。ま、そんなイメージかな?」

(そ、そうなんですか、作詞家の○○先生?)


 女の子らはその後も興味津々で洋観の弾くギターと歌声にうっとりとする。
 前いた世界で聴きかじった懐かしい曲を奏でると、女医のトモカも裏庭に出てきて女の子たちに、「なにその曲。聴いたことない素敵な歌ね」と大いにウケまくる。

 曲は数少ないレパートリーの中から、音楽の教科書にも載ってる定番のフォークの名曲
『あの○晴らしい○をもう一度』『○をください』
 二番目に唄った八十年代を代表するヒット曲『君は天○色』に『○で逢えたら』
 さらにビートルズの『イエスタデー』や、ジブリのインスト曲も大いに受けて、洋観も満更でもなさそう。


 その噂は、この国の国王の元にも届くことになるが、それはもう少しあとのこと。