図書室で髪をかき上げながら読書している場面が似合いそうな文系美少女だ。基本おとなしい性格。仕事はテキパキとこなし、完璧主義で近寄りがたいのだが、時より見せるおちょこちょいな部分とのギャップが萌える。


 ギターの演奏は、ヲタク趣味以外では唯一洋観が飽きること無く続けている趣味だった。

 演奏の腕前の方は、お世辞にも上手とはいい難いが、それでもネット動画にアップできる程度の演奏スキルは持っている。
 せっかく、ギターを手に入らたからには弾かないとギターが可哀想だ。

 ランチの後、裏庭で早速数少ないレパートリーの中から、一番弾き語りに適した、ビートルズの曲を唄ってみることにした。

 彼らの曲の中では、比較的初心者でも引ける定番曲だが、歌唱に自信がない洋観はささやくように唄い始めた。

 何度も演奏して諳んじているから、英語の歌詞もスラスラと淀みなく完璧だ。
 ただし、人前で演奏するのは初めてで、緊張はしていたが、見事に唄いきった。

 猫のクロエ以外では、洋観の演奏と歌声を聴いたものは、家族を含めひとりもいない。

 なんとか、無事最後まで演奏し終えた洋観は、大きなため息をつく。
 
 真っ先に感想を口にしたのは、ツインテのレモンだった。

「上手なのね、ヨーカン! 驚いたわ! それ異国の歌なの? 言葉の意味はわからないけど、今まで聴いたどの歌より素敵なメロディーだわ」

 もちろんレモンは、遠慮なしのタメ口だ。

「そ……そうかな?」
「うんうん、ちょっとビックリして……上手くいえないんだけど、旅回りで歌劇を演じる芸人たちの歌とも雰囲気が全然違ってて、華やかさには欠けるけど、その分胸の奥まで響いてくるようだった」

「そうそう、各地を旅して廻る吟遊詩人の歌はよく耳にする機会があるけど、ヨーカンくんが今唄った歌はなんていうか……、目を閉じて聴いてると小鳥たちがさえずりなばら、元気よく飛び回ってる様子が浮かんでくるようだったわ」

 ポニテのアンズが、レモンに負けじと率直な印象を語った。

(へー、歌詞の意味を理解できないはずなのに、当たらずとも遠からずだ。まあ、本来の歌詞の意図するところとは随分違っているんだが……)

 旅芸人とか吟遊詩人についてての知識は貧弱だ。
 吟遊詩人って言葉では知っていても、具体的にどんな歌を唄っていたんだろう?