「通貨単位はデール。1000デールあれば、贅沢しなければひと月くらいは暮らせていけるだろう」
 1000デールといわれても正直ピンとこない。
「仕事を探しているのなら、ここで働いたらどうだ? 仕事は誰でもすぐに覚えられそうな雑用から始めればいいだろう」

 正直ここまでトモカ女史を頼ってもいいのだろうか。と、ためらった洋観だったが、いつか必ずこの世話に報いると誓って、ひとまず彼女の好意に甘えることにした。

「それではお言葉に甘て、妹のクロエ共々よろしく頼みます」

 洋観は、クロエの後ろ頭に手を回して強引に頭を下げさせる。

 話の通じる異世界の住人と知り合いになれて、幸先の良いスタートが切れたようだ。
 しかもその上、めっちゃ、エロいお姉様ときては申し分ない出だしだ。

「泊まるところがなかった、当面この建物の二階に一部屋空いてるから、そこを使うといい。家具とベッドは二人分備え付けられているし、食事はこの建物の向かいに簡単な料理を提供する食堂があるから、そこを利用するといいだろう」
「本当ですか? それは助かります」
「仕事も、給料は大した額は出せないが、食べていけるくらいならなんとかなるだろう」

 トモカさんは、ただのエロいお姉様じゃなかった。もう女神様決定だ。

「仕事といっても、高度なスキルを必要とする職業でもな。取り敢えずは見習いだから気負わずにのんびりと、うちの若い娘に付いて基礎から教えてもらうがいい」

 若い女の子たちと親密になる機会まで用意してくれるとは!

「通りに面した東側の部屋を寝泊まりに使ってくれ。掃除は昨日したばかりだし、ベッドのシーツや枕も新しいものに交換したばかりで……。これじゃあ、まるで君たちが来ることを予測していたみたいじゃないか? やはり君たちとは因縁めいたものを感じるな」

 トモカは、椅子から立ち上がると、部屋を見渡してこの建物の間取りを説明する。

「この狭い事務室の奥の部屋が診療所。右手のドアを開けると、ここで働く者の休憩室になっていて、キッチンとダイニングも兼ねている。二階は後で二人して確認してくれ。階段は一番奥のにある。急な階段だから気をつけて上り降りしてくれ」

「本当に何から何まで、感謝します」

「な~に、私の着てる服を褒めてくれたことに対しての、私からのささやかな礼だと思って貰えればいいから」