「どういうこと? そんな独り言めいたものも含まれるわけェ?」
「モチのロン」

 多少はジョークをはさめるくらいの嗜みはあるようだ。

「異世界。医師会。地中海」
「地中海ってなんだよ、あの時の僕ちゃんどうしちゃったのよ? あああ―――っ、一生の不覚だああああっ!」

 クロエは頭を抱える洋観を無視して話を続ける。

「幼馴染。妹……」
「ちょっと待った。ってことは、桜と妹の和観もこの世界に転生して来てる可能性があるってことか?」
「そのとおり」
「マジかぁ……。二人には迷惑かけちまったなあ。しかも、どうやったら元の世界に帰れるのか、その手順や方法も知らされてないじゃん!」
「それに関しては問題ない。わたしが元いた世界に帰還するための手筈というか術とでも言おうか……そのへんは完全に掌握しているから安心していい……と思う」
「え? そうなの? な~んだ、それなら心置きなくこの異世界ライフを満喫できるってもんじゃんか。で、あとは何だっけ?」

「いきなり過ぎるだろう!? 十秒って短くね? もう少し長くなんねえの?」
「はあ? 意味分かんないんだけど」
「でも、それが事実。後戻りはできない決まり」

 そんな、ご無体な……。

「で、で、あとは?」

「モテモテ、ウハウハ。ああああ――っ、もう訳わかんなくなってきたっ!」
「そ、そんなことも? もっと時間を有効に活用できてれば? なんかこう……、もっと異世界的で、キラキラ、ワクワクした展開に発展しそうなアイテムとか言ってなかった、その時の僕?」

 クロエは洋観の周章狼狽は完全無視を決め込んでいるのか、記憶をたどりながら淡々と洋観の口走った言葉を列挙していく。

「えっ、もうそんな時間? 想像しろ、想像しろ、妄想しろ……」
「あああ―――っ、アホ、マヌケ、自分で自分を殴りたいわ!」

「ギタリスト」

「右利きなのに左利き用のギター弾いてる。印刷ミスか。左右あべこべじゃン。最後に、美少女、金髪碧眼は間に合ってるから安心しろ」

「金髪碧眼、キタ――ッ! 美少女、ヨッシャア――!! 最後の最後で良くその言葉を思い浮かんでくれた! あの時の僕GJ!! やっぱ冴えてたわ――っ! 元いた世界の自分に感謝だ! サイコ――! ウ――ワッハハハ……!!」

 クロエは呆れ顔で洋観を蔑視するような冷たい目で眺めている。