第二章:思ってたのと違~う

 洋観は、めっちゃエロい衣装に身を纏った妖艶なお姉さまに目が釘付けになった。

 超~ミニのスカートに、黒の網々のストキング。それもガーターストキングときている。さらに彼女は、その長いお御脚をこれみよがしに組み替え、童貞殺しの極め技を繰り出してくる。

 でも、この世界の女子は皆ロングスカートのはず。
 クロエもそう言ったばかりではないか。

 これっていったいどういうこと?

 洋観は、クロエにその答えを求めようと振り返えろうとしたその時、過激なコスチューム? いや、白衣っぽいから仕事着? 
 それとも普段着か? を着たエロっちい美女が洋観らに話しかけてきた。

「あら、珍しいわね。この診療所に客さん……いや患者さんが訪れてくるだなんて」

 その口から発せられる声も、アニメのお姉さま系キャラを得意とする声優さんが演じるような、艶のある色っぺー声音である。当然洋観の心臓は記録的な速さで鼓動を打ち、血流速度はピークを記録した。

「す、すみません、ノックもせず勝手に入ってきて謝ります」
「まあ、そんなことを責めるつもりはないわよ。忙しいのは雑務を担当する若い子ばかりで、私は、ご覧のとおり暇を持て余しているところだったのよ。この診療所に患者さんが来るなんて何日ぶりのことだから、びっくりしただけ。で、ご用件は? 虫歯かな? それともお尻にできものでも?」

「あ、あの~、そもそもここは診療所なんですか? 建物の前には『医師会』とあと『診療所』と書かれた看板は確認したんですが……」

 
 話は少し前後して、洋観とクロエが異世界に転生されて来た直後。落ち着きを取り戻した洋観が人間に姿を変えたクロエに向かって話しかける。

「これって……間違いなく俺の口走ったあれ……だよな、多分……てか間違いなく」

 黙って頷くクロエはこの世界に来てから口数が少なくなったような気がする。

「あと、俺が口にした言葉を全て覚えているんか、クロエ?」
「猫」
「ああ、たしかに真っ先にお前が目に留まって、猫って口走ったかもしれない。他には僕なにを口走った? 猫と、たしか……エロいおねえさんくらいしか覚えてないんだが」
「寝てばかりいて何の役にも立たないくせに……あっ、時間、時間!」

「…………?」

「って言う間にカウント始まっちゃたよ」