『医師会』『診療所』と記された看板の端の方には小さく、『その他相談事、諸々承ります』とも書かれていた。

「これっ多分、いや間違いなくこの中に入れってことだよな?」

 クロエは無言でうなずく。

 洋観は、この看板を掲げた建物の中にいる人物に頼るのが最善の策だと即断し、重厚そうな木の扉を開けた。

 そこは、二十畳ほどの部屋で、室内は机の上に書類や本がうず高く積まれていた。大学の研究室? あるいは高校の教職員室を思わせる空間だった。

 しかし、その机や書類の山の迷路を器用に歩き回る数人の女の子たち。その服装を目にした洋観は、締まりのない顔で、ぽかんと口を開け呆けたように立ちすくんでいる。

 それもそのはず。揃いも揃って、様々な髪型の黒髪の美少女たちの着てるお揃いの服装があまりに……何と言っていいのか……とにかく激エロ衣装だったからだ。

 洋観ならずとも、この光景を目にした世の男どもなら、目の前の光景に卒倒するに違いない。それくらいに刺激的で男の夢を体現したかのようなユートピア。ボーイズ・ドリームな世界がそこにはあった。

 ただ惜しいかな、女の子は揃いも揃ってくるぶし付近まであるロングスカート姿。が、その点を割り引いても十分及第点だろう。

 理想をいえば、せっかくの夢の異世界。せめて膝丈くらいの長さのスカートで、エロ健康的なお御足を拝見したいものだったが、それは欲張り過ぎというものだろうか?

「スカートの丈の長さだけは納得いかないな。なんかチグハグってか、アンバランスってか、もやもやしてスキリ晴れない」
「その原因はおそらくヨーカン自身にあると思われる」

「はあ?」

「ヨーカンの望んだ願い事に、『十秒って短くね? もう少し長くなんねえの?』とうのがあった」
「それって、一切スカートの丈の長さとか関係ねーし!」

「それが、この世界でのルール。願った本人の意志とは微妙なズレが起こることは多々あること。多少……まれに大きく軌道修正された方向で願望が叶うことは、この世界においては常識」

 すると、訪問者の気配を察したのか、奥の方から洋観らを呼ぶ声がした。
 声のした方に目を向けると、そこには一段と際どいエロエロ衣装を纏った、これまたフェロモンを惜しげもなく振りまくりのお姉様の姿があった。