第一章 10回クイズと異世界

 ある日の昼さがり。

 自宅リビングのソファーに寝そべって、最近ハマっている異世界転生物のアニメを好物の干し芋をかじりながら観ていると、なんだか無性に虚しくなってきた。

『村一番の剣の腕前を買われて、王都の剣術大会に出場したはいいが、魔王の娘に見初められ、婿養子にさせられそうになった僕の運命は如何に?』って、まあ、嫌いな作画ではないが、視聴者に媚び過ぎてるところが気に入らない。

「こんなに、いとも簡単に異世界生活に逃避できたら世話ないわ。羨ましくもあるが、自分には無縁なお伽話だわな。でも、それを求める俺もそうとう病んでいることは否定しないが……」

 そうはいっても、このまったりとして、お約束な展開は食傷気味だが、マンネリを通り越して、もはや”文化”へと昇華したと認定してもいいかもしれない。それは洋観の錯覚かもしれないが、ここまで満たされた気持ちになるのはナゼだろう。

 反面、世間のリア充たちは今頃、よろしくやってるんだろうな? 

「彼らの、努力を怠らないバイタリティーやマメな気配りには敬意を払うが、それすら投げ出してる僕に彼らのことをどうこういう資格はない」

 負け犬である洋観が何をいったところで、哀れに哀れを上塗りするばかかりなのは、当の本人が一番実感している。

「ガタン!」

 豪快に玄関のドアが閉まる音がした。

(もちろん、我が愛しの妹君が中学校から帰ってくる時間だから、その音の主は当然生意気ざかりの和観お嬢様である)

 普段ならリビングでグダグダしている兄に、キツーイ嫌味を一言発して二階の自室に上がっていくのが常だが、この日に限ってリビングを素通りして直で二階へ上がっていった。妹の様子がなんとなく気になたが、深くは考えない主義の洋観はテレビに目を戻す。

 魔王の娘っ子は可愛いが、ダラダラとした異世界日常ライフが展開するアニメに、そろそろ見切りをつける頃かもしれない。他にも掃いて捨てるほど異世界転生物アニメはあるのだから。


 ――すると……