いつからここにいて。



いつからこうしているのか、記憶にない。



夜明け前の空はまだ夜明けにはほど遠く、深く昏い。



さらに雨がずっと降り止まない。そのせいで身体は芯から冷え氷のように冷たく、服は水を吸って重い。なのに意識はハッキリとしていて、倒れる気配もない。



忘れられない人がいた。



忘れられない、あの日の…………。



水底に沈んでゆくように、記憶はあの日へと還ってゆく。