「俺、柳瀬とは話が合うなって思ってたけど、なんか根本から合わねえわ」

 そう切り離した高岡に「はあ? お前俺のコネでバイト紹介してやった恩を忘れたのかよ」といまだ最低な男を披露してくれる。
 それに対しても高岡は「いや、もういいし。ばっくれるし。つーかティッシュ配りのバイトぐらいでそんなしゃしゃんなよ」とさらに突っぱねて返す。

「……」

 まるで自分が除け者にされていると感じた柳瀬の怒りは、当然ながら俺へと向かう。

「……お前、そんな病気持ってて、自分が普通だと思ってんの?」

 ぐさり、刺さった矢が抜けなかった。

「なんか普通っぽくなってるけど、全然普通じゃねえから。友達とか彼女とか、んなもん作れるような人間じゃねえから」

 心臓に次々に刺さっていく言葉は、どこまでも深く刺さり続けていく。長い長い矢。

「おい柳瀬! お前いい加減にしろよ!」
「最低! 男としてどうかと思う」

 高岡と吉瀬が、それぞれ俺のかわりに口をひらいてくれた。なのに、あまりにも深く刺さった矢のせいで上手く呼吸が出来なくて、世界がぐらりと傾いたみたいで、苦しかった。
 ……普通じゃない、そんなことは俺が誰よりもわかってるよ。
 そんな反論すら言えない俺は、どこまでも価値がないような人間だった。