空を見上げた拓哉は、静かに目を瞑った。幼い横顔で、今何を考えているのだろうか。
 あのアニメが大嫌いだった。嫌いで、嫌いで、でも見てしまって。
 どうしても思ってしまうんだ。少年のような魔法を持っていた人がいれば、俺の病はなくなって、皆と外に遊べるのにって。そんな人が現れてくれたよかったのにと、そう願ってしまうことが嫌だった。嫌なのに、希望を捨てきることが出来なかった。
 それでも、拓哉は違ったんだ。そっと目を見開いた拓哉は、そのまま空を見上げながら言った。
「僕もね、その人みたいに強くなりたいなあ。誰かを治してあげられたらいいのに。そしたら、病気で苦しまなくていいし、皆幸せでしょ?」
 ――苦しかった。拓哉の真っ直ぐな言葉を聞くと、苦しくなる。
 自分が一番助かりたいはずなのに、治してもらいたいと願うはずなのに、それでも拓哉は笑うのだ。自分も助ける側になりたかったと、きらきらした顔で言うんだ。
 あまりにも、それが、苦しい。自分がどうしようもなく汚い人間のように思えて苦しい。
「なあ、拓哉」
「んー?」
「……いや、なんでもない」
 ――俺と一緒にいて辛くないか?
 その言葉は喉の奥にしまいこんだ。聞いてしまえば、拓哉は笑う。どうして?って純粋に笑う。そして、辛くないよなんて気を使わせてしまう。聞いてしまいたいと思うのは、自分を安心させるための言葉がほしいだけだ。
 救われる人間と、救われない人間が、どうしてこの世に存在するのだろうか。どうして、人は平等ではないのだろうか。等しく同じであれば、妬みが生まれることだってなかった。羨ましいと思うこともなかった。
 病気を患うことが特別だと思えない。思わない。それはどう考えたって、不公平だ。
 健康でいたいと思うことが、どうして叶えられないのだろう。普通でいたいと思うことを、どうして神様は叶えてくれないのだろう。病が試練だと言うのなら、そんな試練を与えないでほしかった。与えてほしいと願う人だけに与えてくれればよかったのに。そしたら、俺は――俺は――