「今日姉ちゃん来るのか?」
「ううん、今日は居残りテストがあるから来ないって」
「そっか」
拓哉と一緒にいるところを見られたら、静かに頭に血をのぼらせて怒るに違いない。拓哉を病室に戻し、俺に冷たい説教をする。見られるわけにはいかない。
――でも、出来ることなら、俺も一緒にはいたくない。拓哉と一緒には、いたいとは思っていない。
「ねえゆき兄ちゃん、このアニメの話教えてよ」
余程あのアニメの話が気になるのか、どこかうずうずしているような顔を見せる。
「……いいけど、俺説明下手だよ」
「いいよ! 気にしない!」
顔をパッと輝かせ目をきらきらとさせる。純粋で、いろいろなものに守られ、そして自分自身に蝕まれていく。そして、それがまだ俺よりも若い年齢であることに、直視出来ない。
「あれは――」
小学生の少年が主人公のその作品は、ある日〝人々の病を魔法で救うことが出来る力〟を宿したことで、医者では治せなかった病を取り除いてしまうという奇跡を起こす。言ってしまえばファンタジー要素の強いヒューマンドラマ。
「でも、その少年にはただ一つだけ、欠点があった」
「欠点?」
「心から大切だと思った人の病だけは、治せないんだ」
少年の母親が不治の病を発症し、どれだけ治す力を使っても治らないという残酷物語。
「結局少年の母親は死ぬんだよ。助けられなくて、助けたいと願う人の病だけ助けることが出来ない魔法なんていらないと絶望するんだ」
絶望し、そして、人を救うことをやめてしまう。死にかけの人が頼んできても、山のような大金を用意されも、少年は力を使うことはなく、目の前で死んでゆく人をただ呆然と眺めていく。
「そこで現れるのが、少女の姿をした神様」
少年と同い年の少女がある日突然現れて、少年に言った。
〝この世は、皆、神様の子なんだよ。お前が助けてやれなかった母親も、神様の子。でも、助けてやれなかったんじゃないんだ、お前の母親がそれを望んだんだ〟
「……どういう意味?」
「少年の母親は、何でも治すことが出来る少年の本当の欠点を知っていた」
大切な人を救えないのが欠点ではなく、もっと別に欠点があることを。
「ううん、今日は居残りテストがあるから来ないって」
「そっか」
拓哉と一緒にいるところを見られたら、静かに頭に血をのぼらせて怒るに違いない。拓哉を病室に戻し、俺に冷たい説教をする。見られるわけにはいかない。
――でも、出来ることなら、俺も一緒にはいたくない。拓哉と一緒には、いたいとは思っていない。
「ねえゆき兄ちゃん、このアニメの話教えてよ」
余程あのアニメの話が気になるのか、どこかうずうずしているような顔を見せる。
「……いいけど、俺説明下手だよ」
「いいよ! 気にしない!」
顔をパッと輝かせ目をきらきらとさせる。純粋で、いろいろなものに守られ、そして自分自身に蝕まれていく。そして、それがまだ俺よりも若い年齢であることに、直視出来ない。
「あれは――」
小学生の少年が主人公のその作品は、ある日〝人々の病を魔法で救うことが出来る力〟を宿したことで、医者では治せなかった病を取り除いてしまうという奇跡を起こす。言ってしまえばファンタジー要素の強いヒューマンドラマ。
「でも、その少年にはただ一つだけ、欠点があった」
「欠点?」
「心から大切だと思った人の病だけは、治せないんだ」
少年の母親が不治の病を発症し、どれだけ治す力を使っても治らないという残酷物語。
「結局少年の母親は死ぬんだよ。助けられなくて、助けたいと願う人の病だけ助けることが出来ない魔法なんていらないと絶望するんだ」
絶望し、そして、人を救うことをやめてしまう。死にかけの人が頼んできても、山のような大金を用意されも、少年は力を使うことはなく、目の前で死んでゆく人をただ呆然と眺めていく。
「そこで現れるのが、少女の姿をした神様」
少年と同い年の少女がある日突然現れて、少年に言った。
〝この世は、皆、神様の子なんだよ。お前が助けてやれなかった母親も、神様の子。でも、助けてやれなかったんじゃないんだ、お前の母親がそれを望んだんだ〟
「……どういう意味?」
「少年の母親は、何でも治すことが出来る少年の本当の欠点を知っていた」
大切な人を救えないのが欠点ではなく、もっと別に欠点があることを。