なんでも、本当になんでもなれると思っていた。無敵だったその心は、いつしか消えていく。現実という名の世界を少しづつ突きつけられていって、夢はほとんど叶わないんだと知ってしまう。
太陽の下を思いっきり遊んでみたいなんて俺の夢も、一生、叶わない。
「ボイコット……ボイコットしようぜ。悪いもんじゃないぜ」
今日も今日とて体育見学組でいると、その隣には体操着を忘れてくる常習犯と時間を過ごすことになった。しかもこれがずっとうるさい。
「そもそもなんでボイコットなんだよ」
「なんでって……いいじゃん、一致団結出来て」
「え……そんな理由?」
「だってあの先生、皆で力合わせましょうって言うから」
思いっきり方向性を間違えていることに気付いていないのだろうか。
自分の発言に疑いもしないこの男に、どっと溜息がこぼれていく。
「……じゃあ、もっとポジティブな方に一致団結したら?」
「ポジティブって?」
「なんか……適当に。皆で歌うとか……いやまあなんでも――」
「合唱か!」
勢いよく立ち上がった高岡に思わず視線が上がる。途端に目を輝かせたその顔は鼻息荒く興奮している。
「うわ! いいじゃん、合唱!」
「いや、もう発表明日から予定は変更出来ないと思うけど――」
「いいねいいね! 俺ちょっとあとで交渉してくるわ! 合唱じゃなかったらボイコットしますって」
「いや、脅しじゃん」
「それなら一人で歌わなくて済むし、一致団結だよな! 一石二鳥じゃん! うわあ、呉野お前天才だよ」
「……どうも」
みるみる元気を取り戻していくその姿に、ただただ引いていく。
本気で言ってるのかと疑ってしまうけど、本気で言ってるとしか思えない。さっきまでボイコットを本気で考えてた男なのだから、恐らくこの授業が終わり次第、音楽顧問に直談判しに行くのだろう。
「希望が見えてきたぞ! 明日が輝いて見える!」
「それは良かったな」
――こうやって、自分がやりたいように動けるのは、少し、羨ましいと感じる。
この男に諦めという言葉は存在しないのかもしれない。どうにかしてやろうという屈強な精神が備わっているのだから、諦めるという言葉を知らないのだろう。
その姿が、いいな、と思ってしまった。人を羨むことは、もうやめたはずなのに。
太陽の下を思いっきり遊んでみたいなんて俺の夢も、一生、叶わない。
「ボイコット……ボイコットしようぜ。悪いもんじゃないぜ」
今日も今日とて体育見学組でいると、その隣には体操着を忘れてくる常習犯と時間を過ごすことになった。しかもこれがずっとうるさい。
「そもそもなんでボイコットなんだよ」
「なんでって……いいじゃん、一致団結出来て」
「え……そんな理由?」
「だってあの先生、皆で力合わせましょうって言うから」
思いっきり方向性を間違えていることに気付いていないのだろうか。
自分の発言に疑いもしないこの男に、どっと溜息がこぼれていく。
「……じゃあ、もっとポジティブな方に一致団結したら?」
「ポジティブって?」
「なんか……適当に。皆で歌うとか……いやまあなんでも――」
「合唱か!」
勢いよく立ち上がった高岡に思わず視線が上がる。途端に目を輝かせたその顔は鼻息荒く興奮している。
「うわ! いいじゃん、合唱!」
「いや、もう発表明日から予定は変更出来ないと思うけど――」
「いいねいいね! 俺ちょっとあとで交渉してくるわ! 合唱じゃなかったらボイコットしますって」
「いや、脅しじゃん」
「それなら一人で歌わなくて済むし、一致団結だよな! 一石二鳥じゃん! うわあ、呉野お前天才だよ」
「……どうも」
みるみる元気を取り戻していくその姿に、ただただ引いていく。
本気で言ってるのかと疑ってしまうけど、本気で言ってるとしか思えない。さっきまでボイコットを本気で考えてた男なのだから、恐らくこの授業が終わり次第、音楽顧問に直談判しに行くのだろう。
「希望が見えてきたぞ! 明日が輝いて見える!」
「それは良かったな」
――こうやって、自分がやりたいように動けるのは、少し、羨ましいと感じる。
この男に諦めという言葉は存在しないのかもしれない。どうにかしてやろうという屈強な精神が備わっているのだから、諦めるという言葉を知らないのだろう。
その姿が、いいな、と思ってしまった。人を羨むことは、もうやめたはずなのに。