(本当に精霊が出てきた)
ってことは俺は、本当に英雄なのか? あまりに唐突すぎて、状況が理解できず、呆然としていると精霊が俺に向かって話しかけてくる。
{おい、聞いているのか?}
{あ、はい}
{お前が呼んだってことだな}
{そうなりますね}
すると精霊は、俺の目の前にやってきて問われる。
{お前は何を求めて俺と契約をする?}
{何って......}
口ごもってしまった。なんせ、ティターニアに魔族の世界征服を止めてほしいと頼まれているが、それが俺は本当にしたいことなのかわからない。
{口籠るってことは決まっていないってことだよな? だったらもう一度来な}
そう言ってこの場から消えそうになってしまったので、引き留める。
{ちょっと待ってくれ}
{なんだ? だったら契約する理由があるのか?}
{わからない。でも}
{でもじゃねぇ。俺はシルフみたいにすぐ契約したりしない}
すると、シルフが出てきて言った。
{サラマンダー。この人は英雄だよ?}
{そんなこと知っている。だけどな、覚悟がない奴と契約なんてできるわけないだろ}
そう言って、俺の方を見てきた。
(覚悟か......)
まず覚悟ってなんだよ? 今まで、誰かに頼まれて古代文字を解読してきた。それじゃダメってことなのか?
{サラマンダー様、覚悟とは何ですか?}
{お前は、俺の力を何に使いたいと考えている?}
{それは......。魔族の食い止め?}
ふと思いついたのがこれであった。ティターニアに頼まれたことでもあったが、それ以上に魔族が世界征服をしてしまったら、魔族とそれ以外の種族で上下関係ができてしまう。そうなってしまったら、今以上に住みにくい世界になってしまう。だから俺はそれを食い止めたい。
{あ~。だったら契約はしない}
{え?}
{魔族を食い止めたい。それは立派なことだ。だけどな、そんなことで俺は契約なんてしない}
{......}
なんでだよ。魔族を食い止めるじゃなんでダメなんだよ。サラマンダー様だって魔族を食い止めるために戦って、封印されたんじゃないのかよ。
{はっきり言う。魔族を食い止めた後、お前はどうする? 俺の力なんていらないんじゃないのか?}
{......}
そこまで考えてもいなかった。まず魔族を食い止めること自体、出来るかわからない。なのにその後のことなんて考える余裕がなかった。でも、サラマンダー様に言われて、自分の愚かさを実感する。
もし、魔族を食い止めた後、俺はその力を何に使うのか。力を弄ぶだけなのか? そう思ってしまった。
俺が考えている時、サラマンダー様が真剣な顔でもう一度聞いてきた。
{もう一回聞くぞ。お前は何のために俺と契約をする?}
{俺は......。俺は}
そこで、周りを見る。すると、ミシェルやアメリアは不安そうな顔で俺を見てきて、モールト王子やラルクさんはよくわかっていない状況で俺を見て来ていた。
(あ~。そう言うことか)
{俺は仲間のために戦いたい}
{仲間のためね。じゃあ仲間が殺されそうになったらお前は世界も見捨てると}
{それは違う。仲間を救うために世界を助けるんだ}
そう、今までは世界征服を食い止めるためにという、浅い考えで行動をしていた。でも本当に俺がやらなくちゃいけないことはそれなのか? ふとそう思った。
俺は、本当に世界を救いたいのか? いや、違う。ミシェルやアメリア、そしてティターニアやアメリアのお父さん。それにミシェルの家族やモールト王子たちを助けたいから今の俺がいるんだ。
サラマンダー様は少し不気味な笑みを浮かべながら言った。
{......。ははは。結局は私利私欲のためってことか}
{あぁ。でもそれが普通なんじゃないのか? 誰だって自分が守りたい、助けたいと思うために力が欲しい。そうだろ?}
サラマンダー様は先程までの不気味な笑みとは一変し、笑顔になりながら俺に近づいてきた。
{いいぞ。そう言うのを待っていた。誰かに言われたからではなく、自分がなすべきことのために力が欲しい。そう言う回答を待っていた}
{だったら......}
すると、真剣な雰囲気になってサラマンダー様が言った。
{あぁ。契約をしよう}
手の甲が熱くなり、あたり一面に熱風が走った。そして、魔法陣に竜のマークがついた。
{これで契約完了だ}
{よろしくお願いいたします。サラマンダー様}
{サラマンダーで言い。リアム}
{わかった}
ふと、なんで名前を知っているんだ? と思ったが、精霊と契約をしたら、お互いの過去が見えると思いだした。
(まあ、俺はシルフもティターニアもサラマンダーも見たことないけど)
そう思うと、少し不公平だよな。俺の知られたくない過去は知られているのに、精霊たちの過去はしれないなんてさ。まあ力を貸してくれているんだからしょうがないって言えばしょうがないんだけどさ。
{そうだ、サラマンダー。姿をみんなに見せてあげてくれないか?}
{ん? いいぞ}
すると、ミシェルたち全員が驚いた顔をしてサラマンダーを見ていた。
「契約できたのね」
「あぁ」
「何度見ても驚くわね」
「そうだね」
俺だって、精霊と初めて会う時は、緊張する。それと感覚は一緒なんだろうな。そして、モールト王子の方を向くと涙を流していた。
「本当にいたんですね。サラマンダー様」
「ん? ずっといたさ」
「そうですよね。あの時はありがとうございました」
「あぁ。覚えていたか」
(??)
あの時とは? 今の発言からも、サラマンダー様と会っていないとらえられるし、古代文字が解読できない時点でモールト王子がサラマンダー様を見ることはできないはずだ。それなのにありがとうございましたってどう言うことだ?
「モールト王子はサラマンダーと会ったことがあるのですか?」
「いえ、ですが昔に一度、私が魔族に襲われている時サラマンダー様が私を助けてくれたことがありました」
「え?」
封印されているのに助けることが出来るのか? そう思った。ティターニアはあの祠から出れないし、シルフだって誰かを助けたとは聞かない。それなのに助けたって......。
「リアム、それは私が説明しよう。私は封印される直前に、竜人国に少しばかり力を残していたんだよ。そして最も危ない状況に陥った時、その力を発動する条件を付けてね」
「あぁ~。そう言うことか」
言われてみれば、封印される前に力を残しておけば、助けることはできるということか。
「リアムさんも本当にありがとうございました。これでサラマンダー様も自由になれます」
「あぁ」
すると、モールト王子の手の甲に俺と一緒のドラゴンの紋章ができていた。
「え? これって」
「モールトよ。私はお主にも力を少し授ける。もし危険な目になったらそれを使うといい。そしてリアムが困っている時、その力で助けてあげてほしい」
「わ、分かりました。それとありがとうございます」
そう言えば、シルフとティターニアもミシェルに力を授けていたけど、ミシェルにも紋章が付いているのかな?
「では、私と一緒に父上と会っていただけませんか?」
「わかった」
この遺跡を出て、竜人国へ戻った。今日はもう日が落ちているので、明日国王と会う予定になり、俺たちは就寝をした。
その夜、あたりがうるさくて目を覚ますと、家が燃えているのを目撃した。
(え?)
何が起きているんだ? 俺はすぐさま、ミシェルとアメリアの部屋に行くと、二人とも起きていて合流する。
「どうなっているの?」
「わからない」
「でも、これって」
「あぁ」
間違いなく、他種族からの攻撃を受けているとわかった。家が燃えているぐらいなら、竜人族たちがここまで騒ぐはずがない。それを裏付けるように、ラルクさんたちが出動しているのが見えた。
そして、俺たちがいるところへモールト王子が入ってきて言った。
「人族が攻め入ってきました」
「え?」
「リアムさんたちはここで待機していてください」
「いや、俺も戦いますよ」
俺が言ったのに続くように、ミシェルとアメリアも頷きながら言った。
「「戦う(よ、います)!」」
「ですが、客人であるあなた方を戦わせるわけにもいきません」
モールト王子は申し訳なさそうにそう言った。王子がそう言うのもわかる。国の問題に対して客人を戦わせるわけにはいかない。でもそれが本当に国の問題ならだ。
「今回攻め入っているのは、人族です。同種族が攻め込んでいるのに戦わないわけにはいきません。それに......」
もしかしたら、今回攻め入ってきたのは、俺たちのせいかもしれない。まだ二日しか経っていないが、こんなタイミングよく攻め込んでくるとは思えなかった。
「......。分かりました。でも無茶だけはしないでください」
「「「了解」」」
俺たちは、王宮を出てすぐさま戦闘が行われているところへ向かった。そこには竜人国の死体がそこら中に転がっていた。
(ひどい......)
なんで、こんなことを。そう思ったが、今はそんなこと言っていられない。今は一人でも多く竜人国を助けなくてはいけない。
俺たちあたり一面を見回して、竜人国の生き残りを探した。すると何人か重傷を負っているが生きている竜人族がいたのでそちらに近寄る。
「ひっ!」
「大丈夫です。俺たちは味方です」
怯えるのもわかる。俺は人族だ。そして殺されかけたのも人族である以上、恐れられるのが当然だ。
俺はティターニアの力を使って、竜人族の怪我を癒した。
「え? あ、ありがとうございます」
「早く安全なところへ向かってください」
そこでふと思い出す。
「ミシェルもティターニア様の力を使って竜人族の傷を癒してあげてくれ」
「わ、分かったわ」
「アメリアは、あたりに人族がいないか探して、見つけたらいち早く俺たちに知らせてくれ」
「わかった!」
俺とミシェルで、竜人族を見つけ次第、傷を癒して非難を促した。そして、十分程経ったところで、竜人族を見かけなくなった。その時、アメリアが俺たちに言う。
「左方向に人族三人がいる!」
「「ありがとう!!」」
俺たちは、人族がいる方向に向かう。すると、竜人族を殺そうとしているところだった。俺は手の甲に魔力を込めてシルフを呼ぶ。
{シルフ!}
{わかった}
人族たちを風魔法で吹き飛ばす。
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ」
「早く逃げてください」
竜人族が逃げ切ったところで、俺たちは人族に方位されてしまった。
(クソ)
風魔法でここをかぎつけたか。
「お前何してんの?」
「お前たちこそ何をしているんだ!」
「何って見ればわかんだろ。竜人族狩りだよ」
全員が不気味な笑みを浮かべて、一人の男性が俺たちに言った。
(竜人族狩りだって?)
「なんでそんなこと」
「それはお前には関係ないだろ。いや、関係はあるか。なぁリアム様」
そう言って、俺たちに攻撃を仕掛けて来た。ミシェルが風魔法で数人を吹き飛ばすが、人数が多すぎて捌ききれなかった。そして、ミシェルが魔法を撃った瞬間の隙をついて、斬りかかってきた。
(やばい!)
俺が駆け寄っても間に合わない。そう思った。
だが運よくアメリアが近くによって、その攻撃をさばいて、攻撃してきた男性を吹き飛ばした。
(よかった)
その後も、俺とミシェルで人数を減らしつつアメリアが俺たちのカバーをする方向で戦った。その時、一人の男性が炎玉を使おうとしてきた。
(これが街に使われたら)
炎玉を街に使われたら、ここら辺一帯が燃え尽きてしまう。
(どうする......)
その時、サラマンダーが話しかけてきた。
{俺の言った通りにしろ。俺とシルフの魔法を合わせろ}
{わかった}
俺は、サラマンダーの言われた通りに右手には風魔法を、左手には火魔法を使って炎玉へ向かって放った。すると、人族たちだけが燃え盛った。
(......)
俺は、人を殺したのか......。そう思いながら、燃え盛った人たちを見に言ったら、見覚えのある紋章がつけられていた。
(!!)
なんでここにロードリック家の紋章があるんだ......。
俺が呆然と立っているところにミシェルとアメリアがこちらへ駆け寄ってきた。そして、俺の家の紋章を見てから話しかけられる。
「リアム! 大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
「あぁ......」
シルフとサラマンダーの力を同時に使ったけど、まだ魔力には余裕があった。すると、ミシェルは俺の事を抱きしめてくる。
「え......?」
「今だけ。今だけだよリアム。でも慣れちゃダメ」
(!!)
実家の刺客が竜人族に攻め行ってきたことが不安なんじゃない。それをミシェルに見透かされているのが分かった。俺が一番何に不安を感じているのか。
「あぁ。慣れないようにする。だからありがとな」
「うん。冒険者なら人を殺してしまう時がある。それにちゃんと考えてね。今回は、私たちが助けなかったらどれだけの竜人族が死んでいたか」
「うん」
ミシェルの言う通りだ。今回、俺がこいつらを殺さなければどれだけの竜人族が死んでいたのか。そう思っただけで、先程感じていた不安がスッとなくなっていくのを感じた。
そこから、ミシェルとアメリアと俺で竜人族の逃げ遅れを探しに歩き始めた。そこから十分ほどたったところで、ラルクさんと出くわした。
「リアムくんか......。大丈夫か?」
「はい。一応はこちらにいた竜人族の方々は避難してもらいました」
「そうか。ありがとう。日が明けたらリアムくんたちには国王に会ってもら居たいけど、いいかな?」
「もちろんです」
ラルクさんの発言からして、俺が今回の火種だってことがわかっている雰囲気であった。
「助かる。三人はもう王室に戻っていい。これからは私の仕事だ」
言われるがまま、俺たちは王室に戻って、各自部屋に戻った。
(覚悟を決めなくちゃ)
そう、今回の火種は間違いなく俺だ。俺が竜人国に来なければこうはならなかっただろう。来ていたとしても、一刻も早く俺が狙われている身だと知らせていたら被害が少なかったかもしれない。
(クソ......)
考えて行くごとに、自分の行動に嫌気が指して行った。そして日が出てきて、俺たちは国王と面会をした。そこにはモールト王子やモールト王子に似ている人、そしてラルクさんなど様々な人がここにいた。
「まず、初めまして。モールトの父である、クリリート・サリケルトだ」
俺たちも国王に続くように自己紹介をした。
「それで本題だが、リアムくんよ、今回攻め入って来た人族に心当たりはあるかい?」
「はい」
俺がそう答えると、王室がざわついた。
「それはリアムくんとどういう関係なんだい?」
「私の実家の刺客です」
すると、騎士である人たちが俺に対して戦闘態勢をとった。それを見るとミシェルが言った。
「リアムの実家ではありますけど、リアムはすでに実家を勘当されている身です。ですのでリアムがこの国に連れてきたというわけではありません」
「そんなことわかっている。だがな、リアムくんが原因であるのに間違いはないだろ?」
「はい」
俺がそう答えると、ミシェルとアメリアは不安そうにこちらを見てきた。だけど嘘をつくわけにはいかない。今回の騒動、確実に俺を殺すために来たはずだ。俺はこの国に迷惑をかけた身であるのだから。
「リアムくんを罰せなければいけない」
「だから!」
「ミシェルさん。話をきちんと聞きなさい。本当なら罰せなければならないが、リアムくんに助けられた人たちが大勢いる。それは国民、そしてラルクからも聞いている。だから今回は不問としようと思ってだな」
すると、騎士たちが驚いた顔をしていた。
「皆も驚くのは無理ない。だが、モールトの言う通りならリアムくんはサラマンダー様と契約をしたと聞く。そして世界の理を知っているんだよな?」
世界の理と聞いて驚いた。ここにいる人たちのほとんどが世界の理と聞いて誰もピンとこないだろう。だが、何人かはわかっているような表情もしていたので、国王から聞いていたのかもしれない。そう思った。
「はい。少しなら知っています」
「私も代々受け継がれる流れで知っている。そして、世界の理を知っている人材、そしてそれを止められるであろう存在を罰すわけにはいかない」
(今の発言からして、国王は本当に知っているんだな)
「だが、一つ条件がある。今後のために、私達とリアムくんたちで条約を結んでほしい」
「え?」
条約? 俺と竜人国で?
突然、国王に言われたことで頭がパニックになってしまった。俺は横を向き、ミシェルとアメリアに目を向けると、二人も状況が整理できていないようであった。
「ん? 聞こえなかったか?」
「いえ、聞こえました。ですがなぜ私なんですか? 私個人ではなく、国単位で条約を結べばいいと思いますけど」
「あぁ。それも考えたさ。でも今回の一件で人族と条約を結ぶつもりはなくなった。だからリアムくんだけでも結ぼうと思ってね」
「そ、そうですか」
俺の実家のせいで人族は竜人国と条約を結べなくなった。そう考えるだけで罪悪感でいっぱいであった。俺のせいではなくとも、血縁者がそのような行動をとってしまったのだから。
「それでリアムくんよ。どうかな?」
「ぜひ、条約を結ばせていただきたいです」
「よかった。では順序が逆になってしまったが、条約の内容を説明しよう」
そこから淡々と国王が条約の内容を説明し始めた。内容として、リアムたちが危険な状況になったら竜人国が助けに行く。そして俺たちは竜人国に最新の情報を伝えること。
それ以外にも、細かい内容はあったが、特に問題がなかったので承諾する。そして、用意されていた書類にサインをして条約が結ばれた。
「今日からリアムと我が国は条約を結んだ。皆もリアムたちに力を貸してあげてほしい」
王室にいる人達の反応はまちまちであった。モールト王子のように嬉しそうにしている人もいれば、騎士たちのように不安がっている人たちもいた。
すると、国王が驚くような行動をした。
「皆も不安だとは思うが、今後の未来のために頼む」
ここにいる全員に頭を下げた。それを見た全員が驚いた表情になった。国王が頭を下げるということがどれだけのことか。それは俺たちが思っているよりも重いこと。
そして、不安そうにしていた人たち全員の表情が変わって、宰相が言った。
「国王様、お顔を上げてください。皆、国王様がここまでして断る人なんていません」
「本当に皆の者、ありがとう。そして今後も宜しく頼む」
こうして俺たちと竜人国で条約が結ばれたのであった。
★
条約が結ばれてから数日が経ち、俺は城下町に出て街の復旧に勤めていた。
「リアムさん、先日は本当にありがとうございました」
「いえ、本当に無事でよかったです」
ここ数日間、城下町に出ていると、助けた人たちにお礼ばかり言われる。
(嬉しいんだけど、何とも言えないよな)
そう、助けたのは事実だが、結局は俺のせいでこの国が危険な目にあってしまった。それを考えると心が痛く感じた。
そして、アメリアが話しかけてきた。
「リアムさん、この後はどうするのですか?」
「う~ん、そうだね。まだ決めていないけど、実家のことを人族の国王に報告しようと思う」
「え? でもそれって」
「あぁ、わかっている。俺の身が危険になることぐらい。でも条約を結んだ以上、最低限やるべきことはやらなくちゃいけない」
血縁者であるからとか関係ない。今回起こったことは、報告しなくてはいけない内容だ。黙っていていいわけがない。
「わかりました。私はリアムさんについて行きます」
「そう言ってくれると助かるよ」
するとアメリアが顔を赤くしながら俯いていた。
(どうしたんだろう?)
こんな平穏な環境を俺は守りたい。だから危険な目に合うからついてくるななんてもう言わない。俺は、この力でミシェルやアメリアたち全員を救うんだから。
二人で話しているところにミシェルもやってきて、アメリアの耳元に何かを言った。すると、アメリアも顔を赤くしながら頷いていた。
(??)
「どうしたの?」
「なんでもないよ~」
「は、はぃ......」
そして、俺たちは人族の王宮に向かうのであった。
★
この時、ロードリック家がどんな立ち位置にいて兄が今後、世界を危険にさらす過ちをするのかまだ分かりもしなかった。