魔王を父に聖女を母に持つアーヴィンの美貌は、何年経とうと衰えることがなく、彼女は耕介を徹底的に甘やかす。前世の記憶がなければ、間違いなくダメ人間になっていただろう。

五歳になった頃、耕介はアーヴィンの苛烈な甘やかしに耐えかねて、少しは独りになりたいと屋敷を抜け出した。

川辺でのんびりしていた耕介は釣りをする老人と出会う。年齢にそぐわぬ受け答えをする耕介を気に入った老人は、孫娘の遊び相手になって欲しいと頼み、耕介は時々老人の孫娘の遊び相手を務める。

一方で領地を狙って耕介の父を陥れようとする貴族たちが暗躍し始めるが、耕介が気付く間もなくアーヴィンが殲滅した。

十二歳になって始めて耕介は、アーヴィンと大きな町へ出かける。

広告代理店勤務の前世の癖で街中の広告が気になるが、ほとんど発達していないことが分かる。

耕介は昼食に裏通りの小さな料理屋へと入る。若い姉妹の経営するその店は味は美味しいのに場所が悪くて流行っていない。

借金取りが押しかけてくるのを見て、主人公は前世の広告代理店の知識を駆使してその料理屋を立て直し、姉妹を助ける。

前世であれだけ嫌気がさしていた広告業で、人助けが出来たことに満足した耕介は広告事務所を設立する。ただし、あくまで人助けになる仕事しか受けない。

次第に高まっていく耕介の名声。利権を狙って耕介を襲おうとする者たちはことごとくアーヴィンが排除する。

やがて魔道による遠隔通信が可能であることを知った耕介は、前世でいう放送網の開発に乗り出す。

だが、国内全域に放送網を張り巡らせようと思えば王家の支援は不可欠。支援を求めて国王との面談をとりつけてみると、出てきたのは、あの釣り好きの老人。あの老人が国王だった。

 国王とその孫娘である姫の積極的な支援を受けて、全国に放送網を敷き、耕介の名声は絶頂を極める。

 周辺国が放送網のノウハウを巡って、フィグマ侵略を計画するが、アーヴィン始め魔王一家によって逆に滅ぼされる。もちろん耕介は全く気付いていない。

 国王は耕介に孫娘と結婚して、王位を継がないかと持ちかける。耕介のためならとアーヴィンは身を引くつもりであったが、その頃、宇宙では巨大な彗星がエルステインに迫っていた。

 彗星との衝突。それがエルステインに予定されていた未曾有の大惨事。アーヴィンと魔王一家は宇宙に出て、彗星の破壊に挑む。

 ボロボロになりながら彗星の破壊を成し遂げて、耕介の下へと戻るアーヴィン。

 耕介は王位を断り、後を姫に任せてアーヴィンとあてのない旅に出る。

 数年後、湖畔の小さな小屋でにぎやかな声。夫婦になった耕介とアーヴィン、その子供たちの穏やかな姿があった。