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 王の間。中央にオベロン王が座り、その横にはシャリポが立会人として立つ。オレとリョウの横には、同じく立会人のフェント。双方から少し離れた場所には長机が置かれ、書記官と思しきギョンボーレの民が五人、ペンを構えていた。

「始めよう」

 王のひと声で、口頭試問は幕を開ける。

「まず、この世界の歴史について述べさせていただきます」

 リョウがこの半年間で頭の中に入れた幾年月もの記録を一から口述する。

 原初、この世界は過酷な自然が広がり、か弱き種族である人間はその脅威に怯えながら暮らしていた。
 そのさまを見かねた聖神ティガリスは、人と大地を調和させる力を持つ石、『聖石(パスタンテール)』をもたらした。聖石により穏やかな環境を手に入れた人間は、農耕と商いを始め、人の集まりは国へと発展していった。

「リョウ。君は今、聖神の名を出したね。それに関して付け加えることはないかな?」

 王は穏やかな声で尋ねる。

「はい。聖神ティガリスは、空の神エナウリと夜の神ウィーの間に生まれた子供。そしてティガリスとウィーは相争うこととなります」
「それはなぜか」
「はい、人間は聖神の子、魔族は夜の神の子だからです」

 聖石によって人間は栄えた。それまで昼の世界の住人であった人間は、繁栄に伴い夜も活動するようになる。それは夜の眷属である魔族の怒りを買った。以来、魔族の王、すなわち魔王と人間は飽くなき戦いを続ける。
 人間の手が及ばない地域、つまり夜の神ウィーの領域を支配する魔王は、近隣の人間領域を侵し殺戮する。人間族の神官は、異界より勇者と呼ばれる転生者を召喚する。転生者は、魔王を打倒し、新たなる王朝を興す。やがて、別の夜の領域に新たな魔王が生まれる……。
 三英雄時代のように優れた勇者が全ての魔王を駆逐した時代もあれば、人間の領土のほとんどを(ウィー)に飲み込まれた時代もあった。
 この戦いの歴史の中で、歴代のオベロン王は常に人間族に友好的な立場を取り、一族の戦士を魔王との戦いに派遣していた。

「魔王タールヴが滅んだあと、勇者カルナによって3つの大陸にわたる広大な版図を持つ国が築かれます。すなわち今の王朝です」

 世界国家である現王朝は、全世界の夜の領域に責任をもつこととなった。常にいずれかの地域で魔王が誕生する可能性がある。事実、現王宮12代の歴史の中で魔王の復活は4回起きている。が、王宮は勇者に玉座を明け渡すのではなく、王族に取り込むことによって、王朝は維持されてきた。

 ほぼ丸一日かけて、オレとリョウは本の内容を完全に詳述し終えた。顔は脂汗でじっとりと濡れ、身体はふらつく。シャリポやフェント、五人の書記官たちも同じような状態だ。
 そんな中で、王が口を開く。

「それでは最後に問いを出す。ひとつ、転生者とはなにか? ひとつ、魔王とはなにか? 答えたまえ」