鬼教師こと宗像 蘭から、どうにか難を逃れることができた勇者タクトと聖女ミハイル一行。
 果たして、痴女魔王のセクハラから逃れ、一ツ橋高校に平和をもたらすことができるのか!?


「ふむ……ちがうな」
 俺は机の上に置いていたノートPCに、くだらない文章を書き起こしていた。
 
 隣りのミハイルは可愛らしい寝息とともに夢の中だ。

 ちなみに現代社会の授業中である。
 俺とミハイル以外も、各々が好きなことをしている。

 当の教壇に立つ若い無精ひげの教師は、コトを見なかったかのように授業を進める。
 そう、無法地帯と化したのだ。
 
 教師の話すことも、ほぼ毎日、ラジオやレポートで習ったことばかりで、『学ぶ』必要性が皆無なのだ。

 ので、俺は小説のプロット作成に勤しむ。
 ミハイルは徹夜でL●NEしていたので、安眠す。
 
 だが、まじめに勉強しているものもいた。
 俺の左側に、眼鏡女子の北神 ほのかがいて、慌てて教師のいうことをノートに写している。
 それ、やる必要ある?
 
 また北神の近くには真面目グループ、つまりは非リア充の一派が色薄く存在していた。
 頭を見ればわかる。
 なぜならば、皆、髪の色が地毛。
 つまり、黒なのだ。
 おもしろいぐらいに真っ黒。
 ま、俺もそのうちの一人なのだが。

「いやしかし……推しは『YUIKA』で決まりでしょう?」
「兄者。拙者は絶対に『AOI』でござる」

 変な口調に話の内容は、おかっぱ頭の日田の双子だ。
 奴らも二回目のスクーリングにして、飽きが来たようで、オタトークに華を咲かせている。

 本当に酷いクラスだ。
 俺も勉強なぞ、在宅で十分じゃ! と教師をバカにしている。

「で、では……みんなに聞きたいことがあるんだけど」
 現代社会のモブ教師がわざとらしく、咳払いをする。
「きみたちは既に18歳になった人もいるだろう……あと数日で選挙だね」
 なにが言いたいんだ。

 俺もキーボードの手をとめる。

「このなかで選挙に行く人は?」
 今日初めて見える笑顔だな、モブ教師。
 そんなに選挙に行きたいのか、それとも自分の好きな『美人すぎる政治家』にでも一票、投票させたいのか?

 一人が手をあげる。
 俺の隣りにいた北神だった。
「わ、私……今月で18歳なので」
 顔を真っ赤にして手をあげている。
 相変わらずの白ブラウスに、紺のプリーツスカート。
 まんま現役JKだよ。
 全日制の三ツ橋高校の制服組に間違えられそうだ。 
 というか、こいつ。俺とタメだったのか。

「そ、そう! えらいね~ センセイ、関心しちゃう」
 鼻のしたを伸ばして、うれしそうに教壇から北神をみつめる。
 キ、キモッ!

「そっかぁ♪ ええと、名前は?」
 わざわざ教壇から降りて、北神の席まで近づく。

「あ、あの……北神 ほのかですぅ」
「北神さんかぁ、キミ可愛いねぇ♪」
今、容姿を褒める必要性あるか?
生徒として見てないだろ。
 止めるべきシーンでは?
 このままでは、北神の貞操がヤバイってばよ!

「おい……」
 俺がいいかけた瞬間だった。

「うぃーす」
 見かけたランプ……じゃなかったハゲ。
 千鳥 力だ。
 て、おい。もう授業はじまって、30分は経ったぞ?
 それでも出席のために、途中からログインする気か。

「おはにょ~」
 このアホな挨拶は奴しかいない。
 伝説のヤンキー『それいけ! ダイコン号』が一人。
 『どビッチのここあ』
 つまりは花鶴 ここあだ。

「あれ? ほのかちゃん、どうしたんだ?」
 困っている北神にハゲが、睨みをきかせる。
 いいぞ、千鳥。もっと凄んでやれ。

「あ、おはよ。千鳥くん……」
 ホッとして、膨らんだブラウスの山が揺れる。
 彼女はいわゆる地味巨乳という奴で、俺からしたらどうでもいいスキルの保持者だ。

「え? 俺の名前を覚えてくれたの?」
 ハゲが照れくさそうに後頭部をかく。
 てか、後ろもツルッツル! そうめんでも流せそう。

 千鳥が北神の席まで足を運ぶと、間に挟まれたモブ教師はうろたえだす。
 公開セクハラを止められて、一安心。

「じゃ、じゃあ授業を再開しよ……」
 言いかけた瞬間だった。

 キンコーンカンコーン。

 この教師はいつもこういう情けない教師なのか?

「あっ、俺たち出席カードもらってないっす」
「あーしも♪」
 図々しいやつらだ。

「は、はい。二人分ね」
 渡すんかい!
 こいつら、何も習ってねーぞ。
 終わっているなこの高校。

 右手に視線をやると、ミハイルはスゥスゥと可愛らしい寝顔を見せてくれる。
 癒されるわ……。

 といって、俺はまたプロット作成に励むのであった。
 学級崩壊してて草。