俺はほのかのせいで、かなりBLの影響を受けていた。
常に脳内で、ミハイルとの絡みばかりを想像してしまう……。
もちろん、裸体でだ。
ほとんど、彼が攻めになってしまうが、知識が乏しいので、寸前で行為を止めてしまう。
それがまた初々しくて、愛らしい。
自ずと、俺の股間は爆発寸前であり、常にカチコチ。
机に擦りつけて、どうにか午前の授業を終わらせた。
名誉は守られたのだ……。
しかし、元気すぎる股間のコイツは、未だに沈静化してくれない。
お昼休みに入り、ミハイルが「一緒に弁当を食べよ」と言ってくれたが、トイレに行くと告げて、逃げるように教室から出ていく。
前のめりで、コソコソと廊下を歩いていると……。
全日制コースである三ツ橋高校の制服を着た女子高生が目に入った。
一人は活発そうな、ボーイッシュなショートカット。
赤坂 ひなただ。
その隣りで喋っているのは、チャラそうな小ギャル。
派手なピンク色に染め上げた長い髪を、後頭部で1つに丸くまとめている。
真っ黒な頭のひなたとは、大違いの校則違反だ。
化粧も濃ゆいし、カラコンやつけ爪。
どこかで見かけた顔だな……。
一生懸命、思い出していると、ひなたが俺に気がつき、声をかけてくる。
「あ、センパ~イ! 久しぶりですね♪」
偉くご機嫌に見えた。
ニコニコと笑って、俺に手を振る。
「おお……久しぶり」
なんでか、分からないが……ひなたの姿を見た瞬間に、股間の熱が冷めてしまった。
治まったことから、良かったんだけども。
女を見ると、沈静化するコイツって、一体……。
「今日はスクリーングですか?」
「まあな……そうだ。ひなたに実は頼みたいことがあるんだ。お前の写真を何枚か、撮らせてくれないか?」
今度の小説に使うモデル写真のためだ。
「え、しゃ、写真!? 私の身体を撮って、ナニをする気ですか!?」
俺が答える前に、右の頬を一発、平手打ち。
ひなたの得意技ですね。
「いって……」
「そ、そういうことは、付き合った恋人同士がするもんですよ!」
「ひなた。お前、なにを勘違いしているんだ……」
頬をさすりながら、呆れていると、近くに立っていたピンク頭の女が間に入る。
「ひなたちゃん。スケベ先生はそういう意味で、言ったんじゃないっす。小説のためっす」
「え……小説? ていうか、なんでピーチちゃんが、センパイのことを知ってるの?」
思い出した。
俺のコミカライズを担当した新人漫画家、筑前 桃だった。
ちなみに、ラノベ版の絵師。トマトさんの妹でもある。
そういえば、三ツ橋高校に通う現役JKだったな……。
「自分っすか? スケベ先生とは、ただのパートナーっすよ。恋愛感情とかないっす。昔から推してる人なんで」
勝手に二人で話を進めだした。
ていうか、スケベ先生ていうの、やめてよ。
「ぱ、パートナー!? 恋愛感情がないのに? それに昔からって……何年前から?」
あら、ひなたってば、また勘違いが暴走してない?
「えっと……スケベ先生とは、インターネット上で出会って、確か10年ぐらい前からだったと思うっす。自分が一目惚れして、勝手に推してるんで……。マジ、リスペクトしてるっす」
それを聞いたひなたは、何を思ったのか、肩を震わせて、拳を作る。
「じゅ、十年前って……ピーチちゃんが幼女の頃じゃん」
「そっすよ。スケベ先生はマジでカッコイイんで。自分は人生を捧げてもいい、って思えるレベルっす。身体をボロボロにされても、余裕っす」
と親指を立てるピーチ。
彼女が話すことは、全て創作活動におけるものだが……。
ひなたにとって、勘違いを更に助長させてしまう、説明になってしまったようだ。
顔を真っ赤にさせて、俺の方に顔を向けると、ギロっと睨みつける。
「センパイ、最っ低!」
そう言って、腫れてない方の頬をもう一発、平手打ち。
「いってぇ!」
「幼女の時からパパ活するとか、この超ド変態のロリコン! 死ねばいいのに!」
「えぇ……」
こいつも想像力が豊かだなぁ。
ていうか、ひなたに会う度、殴られている気がする。