文字通り、暴力で痴漢を撃退したマリア。
しつこく口説かれた事よりも、自分が敵視しているアンナと間違えられたことが一番、腹が立ったようだ。
映画館から出ても、何度も舌打ちを繰り返し、苛立ちを隠せずにいた。
「チッ。あの痴漢。もっと殴っておけば良かったわ」
まだ殴りたいのか……。
「あ、あの……マリア? ちょっと気分転換でもしないか。久しぶりのカナルシティだろ。どこか行きたい店はないか?」
俺がそう提案を持ちかけると、彼女の表情が少し柔らかくなる。
「え? 行きたいお店? そうね……なら、最近オープンしたっていうショップへ行ってみたいわね」
「よし。そこへ行ってみるか」
彼女が言う店は、地下一階にあるらしい。
俺たちはエスカレーターを使って、一番下まで降りていく。
色んなテナントがたくさん出店している階だ。
博多土産、期間限定のスイーツショップ、雑貨、アクセサリーショップ。
その中でも、一際目立つ場所で、マリアは足を止めた。
『デブリがいっぱい! でんぐり共和国。カナルシティ店』
可愛らしい、スタジオデブリのキャラクターが飾られている。
ドドロやボニョなど。
「うわぁ、どれもカワイイわねぇ~」
と碧い瞳をキラキラと輝かせるマリア。
「……」
俺は彼女の横顔をじっと見つめて、考えこむ。
マリアって、こういうの好きだったか?
なんていうか、小説とか、映画。あとは食事の話しか、しないから。
彼女の趣味とか、よく知らないが……。
デブリっていうと、どうしてもミハイルのイメージが強く、重ねてしまう。
俺の視線に気がついたマリアが、眉をひそめる。
「な、なによ? そんなに見つめて……私の顔に、変なものでもついているの?」
「いや……そういう訳じゃないが。お前って、デブリとか好きだっか? なんていうか、もっとお堅い趣味っていうイメージだったんだが……」
「は、はぁ!? わ、私だって、デブリぐらい好きよ! なに? またブリブリアンナと似ているとでも言いたいの!?」
なんか必死に、言い訳しているように見える。
「別に人の趣味だから、良いんだけどな。10年前はこういうの好きじゃないって、言っていたような……」
「じゅ、10年前と比較しないでくれる!? 私も成長したって言ったじゃない!」
「すまん……」
うーむ。マリアって俺が思っている以上に、女の子らしく成長したってことかな。
丸くなっちゃったのか……。
どんどん、容姿だけじゃなく、中身までアンナに近づいている気がする。
※
その後も、彼女が選ぶ店は、どれも可愛らしいものばかり。
女の子に大人気のキャラクター、『ザンリオ』の公式ショップに入ると。
期間限定で販売しているという、ピンク色のボアイヤーマフを手に取り、声を上げて喜ぶ。
「うわぁ~ “マイミロディ”のマフだぁ。可愛いわね。買おうかしら。あ、隣りには“グロミ”ちゃんのもある~」
マイミロディのイヤーマフだが、ピンクのもふもふ生地で、フリルとリボンがふんだんに使われたデザインだ。
人気商品なようで、近くにいた若い女性も手に取り、どちらを買うか悩んでいた。
ちなみに、その客のファッションだが、誰かさんに似ている。
そう、我らがメインヒロインのアンナちゃんだ。
マリアが迷っているもう1つのキャラクター、グロミちゃんも色は黒だが、デザインはやはり大きなリボンとフリルが、かなり目立つ。
これを買うのか……あのマリアが?
しかも、イヤーマフってことは、頭につけるんだろう。
想像できない。
散々、迷った挙句。
「やっぱり、2つとも買いましょ。迷った時は、両方よね」
「マジで買うのか……お前」
俺は余りのギャップに呆れていた。
「な、なによ! 私がこういうの買ったら、ダメっていうの?」
「いや……これ、買ってどうするんだ」
俺がそう言うと、彼女は堂々と胸を張ってこう答える。
「はぁ? 使い方を知らないの? 頭につけるのよ、こうやって!」
わざわざ頭につけて、俺に説明してくれる神対応。
ていうか……確かに似合っている。
そりゃ、あのアンナに瓜二つなんだから、似合わないわけ無いよな。
「可愛い……」
気がつくと、口からその言葉が漏れていた。
それを聞き逃さないマリアじゃない。
頬を赤くして、そっとイヤーマフを頭から外す。
「あ、ありがと……買ってくるわね」
「おう……」
なんか、今の俺って、ときめいてないか?
うう……相手が可愛かったら、誰でもイケちゃうタイプなのかな。
空が夕陽でオレンジ色に染まり出した頃。
マリアと言えば、久しぶりのカナルシティでたくさんの買い物を楽しんでいた。
主に、雑貨が多い。
可愛らしいアクセサリーや色んなキャラクターの公式ショップで購入したグッズ。
夢の国で有名なネッキーとネニーが、プリントされたグラスセット。
本当に女の子らしい物ばかりを好むようになったらしい。
頭の回転が早く、活字が大好きな文学少女のマリアはどこに行ったのやら……。
俺が思っていた以上に、10年間という時は、人をここまで変えてしまうのだろうか。
大きな紙袋を4つも抱えて、満足そうに笑うマリア。
「今日はありがとね、タクト。買い物に付き合ってくれて」
「いや、別にこれぐらい訳ないさ。それより、俺の方こそ、映画のチケットありがとな。無料で見られて、助かったよ」
「え、映画? ああ……あのことね。別にいいわよ。それより、まだ時間ある?」
そう言われて、スマホの画面を確認する。
見れば、時刻は『17:31』だ。
男の俺からすれば、まだ全然遊べる時間だが……女子であるマリアは別だ。
両親も心配するだろう。
「少しなら、いいぞ」
俺がそう答えると、彼女は嬉しそうに微笑む。
「じゃあ……思い出として。最後にあそこへ行きたいわ」
マリアが指をさした方向は……。
カナルシティの屋外にある1つの川だ。
何かと因縁がまとわりついている、博多川。
嫌な予感しか、ない。
だが断れば……それもそれで、後が怖い。
俺は渋々、その案を呑んだ。
※
例の如く、博多川の前に設置されているベンチに二人して腰かける。
もう説明する必要もないと思うが、川の反対側には、ズラーッとラブホテルが大量に並んでいる。
10年前よりも、ホテルは更に増えたような気がする。
河川の周りにはチラホラと、屋台が夜に備えて、料理の下準備を始め出していた。
俺たち以外のカップルは、なぜか暗がりで静かに笑っていた。
時折、顔と顔を近づけて接吻……とまではいかないが、互いの鼻を擦りつけ合う。
「ダ~メ、まだだってば」
「いいじゃん。どうせ、行くんだし」
「ヤダ。ちゃんと部屋に入ってからだよぉ」
「満室だから、ここで待機してんじゃん。もう良いじゃん」
「も~う」
クソがっ!
生々しいんじゃ、コラッ!
一刻も早く、ここから立ち去って空室を探して来い。
俺が辺りのリア充どもへ、殺意を込めて睨んでいると……。
普段、強気なマリアが、辺りの雰囲気に気圧されたのか、頬を赤くして俯いてしまう。
「大丈夫か、マリア? この川はカップルが御用達だからな。喫茶店にでも場所を変えるか」
「ううん……ここで良い。と言うよりも、この川の前じゃなきゃ、ダメなの」
「どういうことだ?」
「実はタクトに相談があって……聞いてくれるかしら?」
「おお……」
マリアは小さな胸の前で、両手を合わせて祈るように、空を眺める。
そして深い深呼吸をした後、俺に視線を合わせて、こう呟いた。
「タクトにしか頼めないことなの……。わ、私の胸を触って欲しいの」
俺は耳を疑う。
「え?」
「あなたの両手で、私の胸を触って……いや、しっかりと揉んで確かめて欲しいのよ」
「……」
頭が真っ白になってしまった。
一体、このヒロインはなにを言い出したのだろうか……と。
心臓の手術が終わったと思ったら、今度は頭の病気か?
「マ、マリア……。意味が分からない。どうして、俺がお前の胸を揉む……いや、触ることに繋がるんだ?」
「私ね……乳がんの疑いがあるのよ。だから、婚約者であるタクトに直接触ってもらって、“しこり”がないか、確かめて欲しいのよ」
彼女の目つきは至って、真剣だ。
ウソをついているようには見えない。
確かに、乳がんを医者よりも先に発見するのは、パートナーだと噂は聞くが……。
だからといって、何故俺が揉むんだ?
「いや……検査したら、どうだ? 普通に」
「絶対にイヤよ! 医者とは言え、他の男に乳房を見せて、触られるだなんて!」
「しかしだな……俺は素人だ。疑いがあるなら、尚更のこと、プロの医師に……」
と言いかけたところで、マリアが大きな声で叫ぶ。
「イヤッ! じゃあ……こうしましょ。医者へ見せる前に、タクトが触診してくれる? それなら、まだ納得できるわ」
「えぇ……」
言い方を変えただけで、俺が胸を揉むのは変わらないじゃん。
マジでどうしちゃったの? マリアちゃんたら……。
結局、マリアの命がかかっているということで、お胸を触診することに……。
彼女と言えば、ベンチに座って、身体を俺へと向ける。
両手は膝の上に置いて、姿勢をピンと真っすぐ伸ばしていた。
そうすることで、改めてマリアの小さな胸が強調される。
思わず、生唾を飲み込む。
合意の元とはいえ、両手でパイ揉みとは、初めての経験だからな。
「じゃあ、いくぞ……」
「うん」
この時ばかりは、マリアも視線を地面に落とし、頬を赤くする。
ゆっくりと、両手を彼女の胸元へと近づける。
大きな白いリボンが邪魔だったから、手で払い、そして低い2つの山へ到着。
お山のふもとから、てっぺんまで優しく押し込む。
いや、感触を楽しんでいるに過ぎないのだが……。
「あんっ……」
甲高い声で反応するマリア。
妙に色っぽい。
そりゃ、そうだよな。
ラブホの前で、触診とはいえ、めっちゃ揉んでいるのだから。
だが、俺は至って冷静だった。
それは乳がんという、疑いがあるから……ではなく。
違和感を感じていたからだ。
「んんっ!?」
思わず、声が出てしまうほど。
“変化”に驚きを隠せない。
それもそのはず、秋ごろに帰国したマリアの胸を事故とはいえ、ダイレクトに揉みまくった時とは、大きな違いがあったからだ。
無い物がある……。
以前の彼女は、付けていなかったはずだ。
ブラジャーを。
ノーブラで柔らかい胸を揉み揉みさせて頂いたから、あの気持ち良さはしっかりと覚えている。
しかし、この感触は……。
硬すぎる。ブラジャーをしていても、肉感が皆無だ。
下着のワイヤーもあるだろうが、それよりも全体的にカチカチ。
パッドで少し膨らみはあるけど……無いに等しい。
これは女性の胸ではない。
「お、お前! 本当にマリアか!?」
驚いた俺は、咄嗟に胸から手を離そうとしたが、両腕を掴まれて動けない。
視線を上にあげると、ニッコリと優しく微笑んでいる彼女の姿が。
「やっと、汚れが落ちたね☆」
喋り方が急に変わった。
「え? ま、まさか……」
「バァ! アンナだよ☆」
「うそでしょ……どこから?」
※
俺の脳内は大パニックを起こしていた。
一体、いつから、アンナだったんだ?
確かに最初、電話で取材を申し込んできたのは、間違いなく女のマリアだった。
喋り方も何1つ違和感のない自然な彼女のまま。
あの強気で上から目線なマリアを演技だけで、今まで騙していたというのか……。
信じられん。
仮に演じていたとしても、中身はおバカなミハイルだ。
頭の良い帰国子女、マリアをあそこまで完コピできるか?
「な、なぁ……今日の取材って、俺はアンナとデートしていたのか?」
「そうだよ☆ 最初からね」
「えぇ……」
血の気が引き、脇から汗が滲み出るのを感じた。
怖い。どこまでやるんだ、この人。
頭が痛くて寝込んでいたんじゃないのか?
両手で頭を抱え、考え込む俺を無視して、アンナは嬉しそうに微笑む。
「タッくん。マリアちゃんなんて、最初からいなかったんだよ☆」
「え? それ、本当か……」
「うんうん☆ 全部、アンナがやっていた偽りの女の子だよ☆ 見ててね」
そう言うと、瞳に人差し指を当てて、何やら小さなレンズを取り外す。
ブルーのコンタクトレンズだ。
両方外せば、エメラルドグリーンの瞳がキラキラと輝き始める。
「慣れないカラコンだから、目がゴワゴワしちゃった☆」
「……」
俺は一体、どうしちまったんだ……。
彼女の言う通り、マリアという幼馴染は、この世には存在しない人物なのだろうか。
それとも、催眠にでもかけられているのだろうか……分からない。
困惑する俺とは対称的に、ずっと笑顔でこちらを見つめるアンナ。
「タッくんはアンナとじゃないと、取材にならないよ☆」
「はぁ……」
放心状態で、彼女のグリーンアイズを見つめる。
なんだか、瞳の奥へと吸い込まれそうだ……。
もう、このままアンナと二人で、川を越えて、どこまでも。
その時だった。
背後から、叫び声が上がったのは。
「待ちなさい! タクト!」
振り返ると、そこには身なりの汚い少女が一人立っていた。
見覚えのある子だが、着ているワンピースがボロボロだ。
襟もとは伸びてしまって、所々破れている。
金色の美しい髪も、バサバサに乱れまくっていた。
一歩、間違えれば、ホームレスかと思ってしまう。
それぐらい汚い女の子だった。
だが1つだけ、キレイな箇所と言えば、その瞳だ。
宝石のような2つのブルーサファイアを輝かせて、こちらをじっと見つめている。
いや、睨んでいるが正解か。
「お前……マリアか?」
「当たり前でしょ! そのブリブリ女が偽物よっ!」
犯人はお前だ的な感じで、人差し指を隣りの少女に突き刺す。
「えぇ、なにこの子。怖~い!」
そう言って、俺の背中に隠れるアンナちゃん。
当然、マリアは小さな肩を震わせて、怒りを露わにする。
「あなたねぇ! 映画館のトイレで私を襲ったくせに、よくもまあ!」
飛び掛かってきた彼女を、俺は必死に抑える。
「ちょ、ちょっと待て……マリア! 堪えてくれ!」
「なによ! タクト、このブリブリアンナの肩を持つ気? トイレで待ち伏せしていたような、狡猾な女よ!」
えぇ……。
もう犯罪とか、ストーカーってレベルじゃないよ。
このあと、マリアを落ち着かせるのに、1時間はかかった。
※
マリアから現在に至るまでの経緯を聞いて、俺は驚きを隠せずにいた。
どうやら、彼女は映画館のトイレで待ち伏せていたアンナに襲われ。
今まで、個室の中で荒縄により縛られ、閉じ込められていたらしい……。
つまり痴漢を殴っていたマリアは、既にもうすり替わっていたということだ。
あれは、正真正銘、女装したアンナが演じていた事に、開いた口が塞がらない。
ファッションもマリアに似せて、コーディネートしている。
まだ1回しか、会ったことがないのに、よくもここまでトレースできたものだ。
「ねぇ、初めてまして……と言いたいところだけど。アンナ! あなた、こんなことをやっても良いと思っているの?」
ドスの聞いた声で睨むマリアを目の前にしても、アンナは余裕たっぷりでニコニコと笑っている。
「え? なんのことかな☆」
全然、悪びれる様子がない。
ここまで来たら、サイコパスだ。
「あなたねぇ……私とタクトの大事なデートを、取材をなんだと思っているのよ!」
「アンナ、分かんないな。だって、タッくんの初めてを奪ったのは、マリアちゃんだったけ? そっちの方でしょ☆」
そう言って、優しく笑いかける余裕っぷりが、更にマリアの怒りを助長させる。
「初めて……って一体なんのことよ! それを婚約者である私がタクトと経験することが、何が悪いの!?」
「悪いよ☆ だって、タッくんが優しいことを良いことに、胸を触らせたもん☆」
「なっ!? あなた……それを根に持って、ここまでの悪行を平気でやったと言うの?」
異常なまでのアンナの『初めて』への執着心に絶句するマリア。
だが、両者一歩も譲ることはない。
怒りをむき出しにするマリアに対し、ニコニコと優しく微笑むアンナ。
カオスな状況に、俺は沈黙を貫いた。
怖すぎるからだ。
この二人の間に俺が入れば、殺される……間違いなく。
マリアは鼻息を荒くして、宿敵であるアンナへ激しく問い詰める。
「いい機会だから、ここでハッキリさせてあげる! 私はタクトの婚約者なの! あなたって、小説のために契約したビジネスパートナーみたいなものでしょ!?」
「違うよ☆ タッくんとは運命的な出会いをした契約関係だよ☆」
なにそれ……その表現だと、俺がパパ活している親父みたいじゃん。
「運命的な出会い? じゃ、じゃあ……恋愛関係に発展する可能性があるってこと!?」
「どうだろね☆」
マリアは僅かだが、動揺していた。
対するアンナと言えば、俺の手を自身の胸で浄化させたという……自身の欲求が満たされた事によって、安心したようだ。
終始、ニコニコ笑ってマリアに対応する余裕っぷり。
「な、なんなのよ! その、タクトの全てを知り尽くしたような態度は……。ま、まさか! あなた達って……」
碧い瞳を大きく見開き、アンナの顔を指差して震え出す。
「ん? タッくんとアンナがどうしたの?」
「き……キ、キッスをした関係じゃないわよね!?」
それまで黙って、見ていた俺だが、思わず空中へと大量の唾を吹き出す。
「ブフーーーッ!」
だって、ついこの前、ミハイルモードとはいえ、ガッツリとファーストキスを交わしてしまったからだ。
マリアの勘だろうが……的をしっかり射抜かれた気分だ。
胸が痛む。そして、息苦しい。
気がつくと、俺の人差し指は自身の唇を撫でていた。
一瞬だったが、あの時の感触を思い出したから。
頬は一気に熱を帯びて、燃え上がる。
心臓を打つ音がドクッドクッとうるさい。
ふと、隣りに立っていたアンナに目をやると……。
同様の仕草を取っていた。
顔を真っ赤にさせて、小さなピンク色の唇を細い指で触っている。
俺と目が合った瞬間に、酷く動揺した様子で、目がぐるぐると泳いでしまう。
お互い、思うことは一致していたいようだ。
すぐにまた視線を逸らして、地面を見つめたが……。
俺たちの不自然な態度を、見逃さないマリアではなかった。
「な、なによ! その反応は!? まさか、もうキッスをした関係だっていうの!? 付き合ってもないのに?」
ド正論だった。
すかさず、俺が弁明に入る。
「いや……あの時のは、事故で……」
しどろもどろに言い訳するから、更に墓穴を掘ってしまう。
「事故でも、キスはキスよ!」
「そ、そうじゃないんだ……。アンナとじゃなくて……ダチとしたって、こと?」
自分で説明していてるくせに、なぜか疑問形。
もちろん、そんな話じゃ納得してくれないマリアさん。
「意味が分からないのだけど? 全く不快だわ、あなた達の関係性が。ハッキリしなさいよ! 聞いているの? アンナ!」
ビシッと人差し指を突き付けられたが、当の本人は“キス”という言葉に動揺しており、余裕が一切なくなってしまった。
顔を真っ赤にさせて、地面をじーっと見つめる。
この恥ずかしがる態度は、ミハイルに近い。
「え……? な、なんだっけ? マリアちゃん……」
「あなたに聞いているのよ! タクトとの関係性! キスまでしておいて、付き合ってないってどういうこと!? 遊びなら、タクトと別れて!」
泣きながら怒るマリア。
よっぽど、ファーストキスを奪われたのが、悲しかったのだろう。
相手は男だから、カウントしなくてもいいのに。
アンナと言えば、ずっと上の空だ。
「はぁ……。マリアちゃんは、アンナに一体なにをして欲しいの?」
「あなたに気安く、名前を呼ばれたくないわ。そうね……関係をハッキリして欲しいのよ。恋愛関係を望んでいるわけでもないくせに。私の婚約者をたぶらかす淫乱ブリブリ女!」
酷い言い様だ。
だが、ここまで人格を攻撃されても、アンナはポカーンと小さな口を開いていた。
頭の中がキッスでいっぱいだからだろう。
「うん……だから、なにをハッキリするの?」
「あぁ! 本当に腹の立つ女ね! じゃあ、言うわよ。あなたとタクトは、あそこに並ぶラブホテルへ行きたいかって事よ! それぐらい彼を愛してるかってこと!」
言われて、また俺とアンナは視線を合わせて、黙り込む。
何故なら“一度”だが、行ったことはある、からだ。
コスプレパーティーをしただけだが……。
「「……」」
謎の沈黙が続く。
それを見たマリアの怒りは、頂点に達した。
「なによ……なんで黙るの……。まさか! あなた達! 付き合ってもないくせに、ラブホテルへ行ったとでも言うの!?」
「「……」」
これ以上、墓穴を掘りたくなかったので、俺たちは何も答えることはせず、沈黙を選んだ。
「さっきから二人とも、なんで黙っているのよ! 本当にラブホテルへ行く関係だとでも言いたいわけ? 聞いているの、タクト!」
アンナが黙っているせいで、怒りの矛先が俺に向けられた。
「いや……本当にそういう関係じゃないんだ。俺とアンナは小説のために、取材をするだけの仲であって……。つまり、ラブホテルは取材目的で行ったに過ぎない」
間違いは言ってない。
少しでも嘘を付けば、勘の良いマリアにはバレてしまうからな。
「ラブホテルに取材? それ、必要なことなの……。じゃあ、若い男女がそういうホテルへ入ったのに、何にもしなかったとでも言いたいの!?」
それに対して、俺は即答する。真顔で。
「ああ。そういうことだ」
「なっ!?」
俺の回答に驚きを隠せないマリア。
「信じてもらえないかもしれないが……。俺たちはホテルへ行ったが、何もしてない。これだけはハッキリ言わせてもらう」
「そ、そんな……健全な男女がラブホテルに入って、何もしない事なんてあるの!? あそこには大人の関係になりたくて、入る以外……使用する意味あるの!?」
「いや、それは一概には言えないんじゃないか、多分……」
だって、ピンク系のサービスを受ける殿方もいるだろうし。
経験が無いから知らんけど……。
「タクト! あなたはさっきから、そう言うけどね! この前は『ラブホテルへ行ったことない』って私にウソをついて……。それにあなたはなんで、ずっと股間が……え、エレクトしているのよ!」
「へ……?」
マリアに指摘されて、俺は恐る恐る視線を股間に下ろす。
すると、彼女の言うように、ガチンゴチンに硬くなってしまった息子くんが目に入る。
膨らみ過ぎて、チャックが僅かに開いてしまうほど、元気になっていた……。
そうか、マリアだと思っていた相手が、アンナだと知ったことにより、無意識のうちに興奮してしまったんだ。
正面から、両手でパイ揉みをしたし、この前、ミハイルとはいえ、ファーストキスを交わした……。
つまり、恋愛における『AからB』を一気に経験してしまったのか。
大人の階段、昇っちゃったの? 男で……ないだろ。
だが、身体はしっかりと反応している。
全身の血流が全て、一か所に集い、パンパンに膨れ上がる。
股間が沈静化することは、難しい。
「ま、マリア……これは、違くて……」
「ナニが違うのよ! 最低っ、そんなに私とデートをしたくなかったの? こんな屈辱は初めてよ……どうせ、今からそのアンナとキスでもして、この川を越えるつもりだったんでしょ!?」
涙目で怒るマリア。
ていうか、よくそこまで想像できたな……。
誤解だって言うのに。
「ちょっと待ってくれ! そんな気はなくて……。おい、アンナもなにか言ってやってくれよ」
隣りにいたアンナへ助けを求めるが、未だに彼女は黙りこくっていた。
頬を赤くして、チラチラとある所を見つめる……。
俺の股間だ。
「……」
黙るなよ、否定してくれ。
しかも、その反応。更に誤解を生むんじゃうよ。
「もう、いいわ! あなた達、本当に最低で卑猥よ! 不快で仕方ないのだけど!」
ヤバい、更に火をつけちゃった……。
「マリア……本当に違うんだ、これは……」
そう言って、彼女の元へ数歩を脚を進めると、「近寄らないで!」と怒鳴られた。
「さっきからエレクトしっぱなしのタクトに触られたくない!」
あ、忘れていた。
常時、卍解している俺の股間を。
顔をぐしゃぐしゃに歪ませ、碧い瞳は涙でいっぱい。
冷静沈着な彼女が、こんなに感情的になるのは初めてだ。
よっぽど、屈辱的な出来事だったらしい。
「も、もう……いい。私、今日は帰るっ!」
そう言うと、マリアは俺たちに背を向けて、カナルシティの方向へと走り去ってしまう。
良かったのだろうか、これで。
実質、初めてのデートだったろうに。
走り去っていくマリアの後ろ姿を見て、俺は胸が締め付けられる思いだった。
もう追いかけても、間に合わないと思ったが……。
「マリア、待ってくれ! もう少し話を聞いてくれ!」
声だけが虚しく、カナルシティに響き渡る。
その時だった。俺の肩を優しく触れられたのは。
振り返ると、ニッコリと微笑むアンナの姿が。
「タッくん。そっとしてあげた方がいいと思うな☆」
どの口が言うんだ……。
「いや、しかしだな。マリアのやつ、泣いてたし……」
「ううん。タッくんは男の子だから分からないと思うけど。女の子ってこういう時は、ひとりでいたいって思うの」
なんて、知ったよう口ぶりで語りやがる。
お前は男だろがっ!
結局、アンナに止められた俺は、可哀そうだがマリアは放っておくことにした。
後日埋め合わせをすれば、どうにかなるだろうと……。
「ところで、タッくん☆」
「え?」
「アンナね。お昼から何も食べてないの……どこかで食べて帰ろうよ☆」
この人は……他人のデートを奪っておいて、自分はガッツリ楽しむつもりか。
深いため息をついたあと、俺はこう提案してみた。
「じゃあ……いつものラーメン屋、博多亭でどうだ?」
「うん☆ あのラーメン屋さん、大好き☆」
エメラルドグリーンの瞳をキラキラと輝かせて、嬉しそうに笑うその顔を見ると、なんでか許しちゃうんだよなぁ。
※
ラーメン屋までは、はかた駅前通りを歩くのだが。
空も暗くなってきたので、かなり冷えてきた。
タケちゃんのTシャツにジャケットを羽織っているが、さすがに夜は寒い。
「結構、冷えるな……」
「うん。アンナも冷え性だから、困るかなぁ……あ、あれを使おうよ☆」
「へ?」
彼女が大きな紙袋から取り出したのは、ザンリオショップで購入したイヤーマフだ。
もちろん、普通のマフとは違い、ピンクのもふもふ生地で、フリルとリボンがふんだんに使われたガーリーなデザイン。
主に可愛らしい女の子が好んで、着用する代物だ。
「アンナは女の子だから、“マイミロディ”を使うね☆ タッくんは男の子だから、黒の“グロミ”ちゃんを使えばいいよ、はい☆」
とイヤーマフを渡された。
これをつけろってか?
男の俺が……無理無理。
「悪いがやめておくよ。こういうのって、女の子がつけるもんだろ?」
そう言うと、アンナは頬を膨らませる。
「つけたほうがいいって! 風邪引くよ!」
これをつけて、博多を歩くぐらいなら、風邪を引いた方がマシ……。
「そう言う意味じゃなくてだな……俺は男だから、つけるのに抵抗があるんだよ」
「あぁ。そういうこと。でも、大丈夫だよ☆ グロミちゃんは色が黒だから、男の子カラーだよ☆」
「え……マジ?」
※
結局、俺は半ば強制的にグロミちゃんのイヤーマフを頭につけられ、仲良く博多を歩くことになってしまった。
すれ違いざま、その姿を見た人々は「ブフッ」と吹き出す始末。
なんて、罰ゲームだ。
しかも成り行きとはいえ、ペアルックだもの。
「ちょ、あれ見てよ。今時ペアルックだなんて」
「いいんじゃない? 若いんだし」
「時代は多様性だから、認めてあげないと」
最後の人、別に俺は認めなくていいです!
狙ってペアルックにさせたのかは、分からないがアンナは終始、嬉しそうに隣りを歩いていた。
ラーメン屋について、店の引き戸を開いた瞬間、顔なじみの大将がお出迎え。
「らっしゃい! あら……琢人くんと隣りの子はアンナちゃんかい?」
「ああ、大将。ラーメンを2つ、バリカタでお願い」
俺とアンナはカウンター席に座って、麺が茹で上がるのを待つ。
大将が厨房で麺を湯切りしながら、俺とアンナの顔を交互に見つめる。
「なんか、今日のアンナちゃん。感じが違うなぁと思ったけど、コスプレでもしているのかい? 頭もペアルックしちゃって。二人はもう、そこまで仲良くなったんだねぇ」
勘違いされてしまった……。
しかし、指摘された当の本人は、嫌がる素振りなどない。
「嫌だぁ~ 大将ったら☆ これは寒いから、つけているんですよぉ☆」
「へぇ、今時の子たちは寒いと、そんな可愛いものを彼氏につけるんだねぇ。二人とも可愛いから餃子をサービスしてあげるよ」
「やったぁ☆ 良かったね、タッくん☆」
クソがっ!
こんな恥を晒せば、俺でも餃子が無料になるのかよ。
あれから一週間が経とうとしていた。
初めてのマリアとのデートは……メインヒロインであるアンナにより、大失敗となってしまう。
正直、彼女への罪悪感で胸が締め付けられる。
さすがにまずいと思ったから、毎日マリアへ電話をかけたが、不在ばかり。
全然、電話に出てくれない。
何度もかけたが、きっと無視されているのだと思う。
メールにて謝罪の文章を送ったが……これも反応無し。
完璧に怒っているな、これは。
毎朝、スマホをチェックしているが、特に通知はない。
仕方ないから、朝食を軽く済ませて、俺は地元の真島駅へと向かった。
今日が一ツ橋高校のスクリーング日だからだ。
小倉行きのホームで列車を待っていると、ジーパンの右ポケットに入れていたスマホが振動し始める。
急いで、スマホを取り出して着信名を確認する。
しかし名前を見て、ため息が漏れてしまう。
「チッ……もしもし」
『ちょっと! DOセンセイ、なにイラついてんですか? 出てすぐに舌打ちとか……』
相手が担当編集の白金だったから、ムカついてしまった。
「すまん。ちょっと相手がお前だったから、ガッカリしただけだ」
『え、フォローになってないんですけど……。まあ、いいや。今日はスクリーングの日でしょ?』
「ああ」
『学校前に悪いんですけど。お仕事の話、いいですか?』
「数分ならいいぞ」
『良かったぁ~ 実は、今度“気にヤン”の2巻と3巻が来月に同時発売が決定しまして……』
それを聞いた俺はすかさず、ツッコミを入れる。
「はぁ!? 早すぎだろ! 入稿したの、ついこの前だろが!」
『いやぁ、編集長がアホみたいに売れているから、ブームに便乗しろってうるさいんですよぉ』
クソが……俺の他作品はそんな扱いしなかったくせに。
「わかったよ……。で、俺への要件ってなんだ?」
『DOセンセイに直接のお仕事ってわけじゃないんですけど。ご協力をお願いしたいんです』
「協力?」
『ええ。今回のヒロインとなる現役JKである、ひなたちゃん。それから、腐女子のほのかちゃんの写真を提供して欲しいんです。イラストのモデルとして必要でして……』
「なるほど」
絵師であるトマトさんが必要としているということか。
メインヒロインであるアンナは、正体を隠しているから、モデルはギャルのここあに差し替えられてしまったが……。
『やっぱりダメですかね? DOセンセイのカノジョ候補になる大切な女の子たちですから……』
俺はそれを聞いて、即答した。
「いいぞ。何枚いるんだ?」
『は、早っ! アンナちゃんの時はあんなに嫌がったくせに……。腐女子のほのかちゃんなら、まだしも……。ひなたちゃんの写真をトマトさんに貸すの、ためらいとかないんですか? おかずにされるかもですよ!』
トマトさんってそんなに信頼できない男なのか?
しかし、自分でもよく分からないが、何故かアンナ以外の女子なら、情報を差し出すのに抵抗はないんだよなぁ……。
「トマトさんがそんなことするわけないだろ……。あの人、好きな女の子? がいるし」
相手がここあだから、疑問形になってしまった。
『へぇ。そうだったんですか。でも、本当に写真提供、許していいんですか』
「ああ、許可は本人達が決めることだ。俺じゃない。ま、大丈夫だろ。アンナはダメだけどな」
『な~んか、アンナちゃんだけ特別扱いしてません? DOセンセイ』
「いや。それはない。もう電車に乗るから、切るぞ」
話はまだ終わっていなかったが、一方的に電話を切ってしまう。
白金に全てを見透かされているような気がしたからだ……。
「アンナだけ……か」
列車に入ってもしばらく頬が熱く、近くに座っていた女子高生の視線が気になった。
別に嫌らしい目つきではなく、同族……。
片想い同士、共感しているような顔つき。
その証拠に相手も頬が赤い。
違う、俺はノン気だ……。
だから、そんな目をしないでくれ。
『次は席内~ 席内駅でございます~』
車掌のアナウンスで、意中の人物との再会することに気がつく。
彼が住んでいる地元だからだ。
プシューっと音を立てて、自動ドアが左右に開いた。
視線を下にやれば、白く長い美しい脚が二本並んでいる。
「おはよ☆ タクト」
ニカッと白い歯を見せて、元気に笑うミハイル。
前回のスクリーングとは大違いだ。
きっと、マリアのパイ揉み事件を克服したからだろう。
「ああ……おはよう」
ただ挨拶を交わしただけ、だと言うのに……視線を逸らしてしまう。
つい先ほど、白金に女装した彼のことを、特別視していると指摘されたからだと思う。
ずっと頭の中は、アンナでいっぱいだった。
今のこいつ……ミハイルは男だって言うのに、目を合わせれば、頬が熱くなり、緊張してしまう。
違う。
こいつのファッションが悪いんだ。
今日だって、11月に入ったのに。
相変わらず無防備なデニムのショートパンツ。
トップスは肩だしのニットセーターにタンクトップ。
足もとこそ、ボーイッシュなスニーカーだけど……。
金色の長い髪は首元で結い、纏まりきらなかった前髪は左右に分けている。
エメラルドグリーンの大きな瞳を輝かせて、ニコニコ笑うその姿は、どんな女よりも可愛い。
「タクト? どうしたの?」
見入ってしまった俺を不思議に思ったようで、前屈みになり、顔をのぞき込む。
自然と胸元の襟が露わになる。
中にタンクトップを着ているとはいえ、もう少しで彼の大事なモノが見えそうだ。
「な、なんでもない! 早く、隣りに座ったらどうだ!」
つい口調が荒くなってしまう。
照れ隠しのために。
「うん……変なタクト」
※
俺の隣りにピッタリとくっついて、嬉しそうに笑うミハイル。
やはり、この前のデートで自信が回復みたいだな。
まあ……代わりにマリアのダメージがデカく残ってしまったが。
車窓から陽の光りが差し込んでくる度に、ミハイルの耳元がキラッと輝く。
違和感を感じた俺は、彼の小さな耳に触れてみた。
「なんだ、これ?」
親指の腹で感触を確かめてみたが、結構硬い。
よく見れば、反対側の耳にも同様の小さな装飾品が付けられていた。
「ひゃっ!? い、いきなり、なにすんだよ! タクト!」
「あ、すまん……なんか見慣れないものが耳についていたから、“できもの”かと思った」
俺がそう言うと、彼は頬を膨らませる。
「違うよ! これはピアスなの!」
「ピアス? なんでまた、そんなもん付けたんだ? 男なのに……」
その一言で彼の怒りのスイッチが入ってしまう。
「男とか女とか関係ないじゃん! カワイイから付けたかったの!」
「お、おお……確かに性別は関係ないもんな。すまん」
「分かってくれたなら、いいけど……」
しかし、何故今になって彼がピアスを付けたのか、俺には理解できなかった。
別にイヤリングでも、いいんじゃないかと思って。
「なぁ。ピアスを付けてるってことは……耳に穴を開けたってことだろ? そこまでして付ける必要性があったのか?」
俺がそう言うと、彼は急に視線を床に落とし、頬を赤くする。
もじもじして、ボソボソ喋り始めた。
「だ、だって……イヤリングより、ピアスの方がカワイイのいっぱいあるから。それで穴を開けたんだ」
「なるほど。ピアスの方が種類が多いってことか……」
「うん☆ ここあから聞いて、それでアンナと一緒に開けたんだ☆」
言っていて、寂しくない?
一人で開けたのに、友達アピールとか……。
「ピアスを開けるって言うと、やっぱりアレか? 耳の裏に消しゴムを置いて、安全ピンでブッ刺して、開けるのか?」
「そんなこと、するわけないじゃん!」
「え? 違うの?」
「ちゃんとした病院で手術したの! タクトみたいなやり方で開けたら、ばい菌とか、化膿とか、色々トラブルが多いんだよ!」
「悪い。知らん」
「だから、麻酔とかしてくれるお医者さんにやってもらった方が安全だし、手術のあと、穴が埋まったりしないし。慎重にしないとね☆」
なんて、ウインクしてみせるミハイル。
ヤンキーのくせして、そういうところは、めっちゃ慎重なんだね。
根性焼きみたいな感じで、グサグサ刺して、開けまくるのかと思ってた。