「恥ずかしいから、あんまり部屋の中をジロジロ見ないでくださいね」
とひなたは頬を赤くして、扉の前で恥じらう。
「大丈夫だ」
「私の部屋、あんまり女の子らしくないから……センパイにがっかりされたくないな」
なんて唇を尖がらせる。
しかし、両親が同じ部屋で泊れと、命令してきたのだ。
ここで泊るしか、あるまい。
パパさん曰く、「間違いがあっても構わん。むしろ起こしてくれ」だが。
俺としては、板挟みで息が詰まりそうだった。
目の前のひなたに、どこかを徘徊しているアンナ。
ギギっと扉がゆっくり開かれた。
何故か、部屋の中は真っ暗だ。
俺がひなたに灯りをつけるように頼む。
すると、そこには衝撃の光景が……。
バッサバッサと音を立てるのは、止まり木から俺を睨む大きなフクロウ。
それも三匹。
柔らかいクッションフロアをくねくねとうごめく、無数のヘビ達。
そして、ガラガラとうるさいのは、ゲージの中で回し車をまわすハムスター。
他にもインコ。フェレット。チンチラにトカゲ。ハリネズミ……。
ちょっとした動物園よりも、ペットの数が多すぎる。
「……」
俺は言葉を失っていた。
これのどこが女の子らしくない、部屋なんだ。
もう、男女関係ないだろ……。
当の本人は、足をくねくねさせて、恥じらっているが。
「ね、女の子らしくないでしょ? この部屋に入ったの、センパイが初めてなんです」
「そうか……嬉しいよ」
こんな動物園。確かに男女関係なく、入れたくないだろう。
ていうか、入りたくない。
だって、今も俺の足元を無数のヘビさん達がまとわりつくんだもん。
「センパイ……ホントに今晩、私の部屋に泊るんですか?」
瞳をキラキラと輝かせるひなた。
きっと。一晩、同じ部屋で寝ることに緊張しているのだろう。
「ああ。泊るよ……」
今にもヘビに噛まれそうで、怖いから。
※
同じ部屋で泊ると言っても、ひなたは大きなプリンセスベッドでご就寝。
大好きなペット達と、一緒に夢の中。
可愛らしいフェレットが、布団に入り込むほど、飼い主が大好きなようだ。
俺はと言えば。床に布団を敷いてもらい、ひなたの隣りで寝ることに。
ひなたは、嬉しそうに「今日はいい夢が見られそう」と言っていたが。
すぅすぅと寝息をたてる彼女とは対照的に、俺はギンギンと目を光らせていた。
暗い部屋の中、一人で天井を見上げる。
若い女の子とひとつ屋根の下で、おねんねするからじゃない。
夜這いとか、そんな余裕は一切ない。
俺の布団の中に何人ものお客さんが、入り込んでいる。
先ほどのヘビさん達だ。
どうやら、珍しい男の客である俺を気に入ったらしく。
ずっと、俺の身体にまとわりついている。
何匹もだ。
時折、枕元に顔を出してきて、舌をチロチロと出す。
そして、ペロペロと首筋をなめてきた。
「あっ……」
冷たくて、ちょっと気持ち良いかも。
このあと。ヘビさんたちと、一晩中仲良しさせていただきました。