アンナの発案により、急遽リキはスマホを取り出すことに。
目的は撃沈したほのかにL●NEすることだ。
まだやめておいた方が良いと思うのだが……。
「なんて送ればいいかな? アンナちゃん」
目をキラキラ輝かせて助言を求めるリキ。
「そうだな~ アンナだったら、好きな人には自撮り写真を送るかな☆」
「ブフッ!」
思わず吹き出してしまった。
そりゃ、あんたがカワイイからだろと。
ガチムチ兄貴のリキの自撮り写真なんて、誰が喜ぶんだよ……。
「わかったぜ! じゃあ今から写真撮って送るわ!」
ファッ!? 真に受けるんかい!
「うんうん☆ いいと思うよ☆ 撮る時は出来るだけ上からにしたほうがいいよ。上目遣いでおでこにピースすると更に、良きかな☆」
悪きです……。
「さすが、可愛い女の子の言う事は違うな! よし、じゃあ電車の中だけどやってみるわ!」
そう言って、人目も気にせず、車内で自撮りするリキ。
近くにいた若い女子高生がその姿を見て苦笑していた。
「なにあのおっさん。乙女ぶってさ」
「あれじゃない? きっとLGBT的な?」
そういう偏見や差別は良くないと思います。
自撮りをしている最中も隣りに立っているアンナから逐一、指導を受けるリキ。
その大半が典型的なブリッ子のポージング。
見ていて辛い。
やる気マンマンで連写しているリキをボーッと眺める俺に対し、アンナが耳打ちしてくる。
(ねぇ。タッくん、これならイケそうだよね☆)
どこがだよ!
(まあ……何事も経験が大事だからな)
(だよね☆ ところで今日ってどこに行くの?)
そうだった。まだ彼女にちゃんと今日の取材を説明していなかったな。
(それなんだが……女のほのかでは行けそうにない映画館に、リキを行かせようと思っているんだ。腐女子のほのかを落とすには、リキのルックスでは無理だから。趣味で距離を縮めようと思っているんだ)
言いながらも、胸が痛む。
だが、それを聞いたアンナは瞳を輝かせて、喜ぶ。小さく拍手しながら。
(スゴイスゴイ! 知らないおじさん達と仲良くなれる場所だよね? タッくん、アンナの考えと一緒なんだ☆ 嬉しい……)
なんて頬を赤らめる。
全然一緒じゃないんだけどね。
何枚も写真を撮り終えた所で、リキが俺たちに質問する。
「なあ、これ送るのはいいんだけどさ。なんてメッセを送ればいいかな?」
うっ! 今から社交場に向かうなんてダチには言えないよぉ!
俺が言葉に詰まっていると、代わりにアンナが答える。
「えっとね。『今から知らないおじさん達とお話に行くお』『中洲なう』って送ればいいと思うよ☆」
軽すぎる! しかも何気にほのかなら、喜びそうなワードじゃん。
「へぇ……よくわかんねーけど、女の子のアンナちゃんが言うなら、多分それが正解なんだよな! さっそく送るわ!」
マジで俺にも答えが見つかりません。